カスハラをめぐる話題を多数見かけるようになっている。東京都による防止条例が施行され、改正法の施行も控えている。しかし他のハラスメントと異なる事情も多く、対応には多くの工夫と努力が必要だ。その対策のポイントをTBSビジネス法務部の弁護士・梅岡哲士氏と同部マネージャーの矢内一正氏が解説する。
ハラスメントの“仲間入り”したカスハラ~夢の国からの「出禁」も現実味~
2024年10月、全国で初めてのカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」という。)防止条例として、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(以下「都条例」という。)が制定された(注1) 。
都条例は2025年4月1日に施行された(注2)が 、お隣りの千葉県浦安市で東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドは、これを受けるような格好で同月18日に「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を公表した。
これによると、お客様の要求や言動が「カスハラ」に該当すると判断した場合には、原則として、以降のお客様対応や施設利用をお断りさせていただくという。すなわち「出禁」である。夢の国であるTDRから「出禁」になってしまうとは、何とも夢のない話であるが、それほどまでに「カスハラ」というものが深刻な社会問題になっていることの傍証であるともいえよう。
「カスハラ」は、それ以前にも「『現代用語の基礎知識』選 2024ユーキャン新語・流行語大賞」の候補30語に選ばれるなど、一般的な用語として広く使用されていたが、都条例の施行に伴い、その普及啓発ポスターが様々な場所に掲出されたことで、社会問題としてより身近に意識されるようになった(注3)。とはいえ、都条例のレベルでは、顧客・従業員・会社のそれぞれに責務が課されてはいるものの、いずれももっぱら努力義務に留まっており(注4)、違反した場合の罰則も設けられていなかった。
企業におけるハラスメント防止の措置義務に関しては、これまで法律のレベルで2007年の「セクシュアルハラスメント」(1999年施行時は配慮義務)、2017年の「妊娠・出産等に関するハラスメント」と「育児休業等に関するハラスメント」、そして2020年の「パワーハラスメント」の4種類(4類型)について法制化されてきた。
このような流れの中で2025年6月に改正された労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、以下「改正労推法」という。)により、カスハラについても措置義務が求められることとなった。晴れて法律上のハラスメントに仲間入りをしたのである(注5)。
改正労推法は、早ければ2026年10月頃に施行される見通しだが、以下では、法律上のカスハラの内容を点検しつつ、各企業に求められる対応を明らかにしたいと思う。そして、それについて、いささか筆者らの私見を述べたいと思う。














