改正労推法が求める「必要な措置」とは

改正労推法第33条第1項は、先に見たとおり、事業者(会社)が雇用管理上「必要な措置」を講ずべき旨を定めているが、同条第2項は「労働者がカスハラの相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止」、同条第3項は「他の事業主から措置義務実施に関し協力を求められた場合に応ずる努力義務」も定めている(注9)。

これらの詳細については、2026年10月頃の施行日までに厚生労働大臣が定める指針(ガイドライン)で示されることになっているが、先ほどの労政審の建議では、その具体的な内容として、以下の表の事項を挙げている。

表の「必要な措置」は、これまで国がセクハラやパワハラの指針で示してきた内容を基本的に踏襲している。そのため、我が国の各企業は、2025年10月現在では、これまでのセクハラ対応・パワハラ対応の際と同様に、社内規程・マニュアルの制定や相談窓口等の体制整備を進めつつ、新たに「カスハラ防止ポリシー」を策定・公表するといった対応を進めている状況である(注10)。

ここで筆者らが重要だと考える視点は、厚労省が2022年2月に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」にも示されているとおり(注11)、カスハラは、セクハラやパワハラと異なって、企業や業界により対応方法や基準が異なるという点である。

各企業は、こうしたカスハラの特殊性に照らして、個社事情に沿った個別具体的な対応を進めるべきだが、これがなかなか難しい(注12)。筆者らが注目するユニークな事例については、後ほど紹介したい。

なお、事業者(会社)がこの「必要な措置」を講ずべき義務に違反した場合や、不利益取扱いを行った場合には、行政(厚生労働大臣・労働局)が事業主(会社)に指導、勧告、公表等を行う権限が定められているほか、紛争解決の手段として、労働局による「調停」手続等も用意されている(ただし、違反に対する刑事罰の定めは置かれていない・注13) 。