肉親が立ち上がるべき最後のチャンス

少年時代の幕田稔大尉

しかし、金井弁護士は幕田の量刑については、厳しい見通しであることをはっきり伝え、判決が迫る中「最後の方法」として嘆願書を提出するための具体的な情報を書いている。

<金井重男弁護士から幕田トメ宛の手紙 1948年2月14日>
上官の直接命令による斬首をはっきり認めておられる稔君は、相当重い刑は免れ難く、請願運動がどの位、効を奏するかは分かりませんが、奏功の例もあるので後に悔いを残さぬよう最後の方法を尽くすことになった次第です。それこそ肉親や知己が、立ちあがるべき最後のチャンスと言うべきで、よい成果を上げることを祈っております。

文章は小生と辰野君とでまとめ上げますから、参考資料がありましたらご通知下さい。高潔な人格、旺盛な正義感情、知人間における好評等、稔さんの人格証明を第一とし、家庭の状況、本人が欠くべからざる人である事情等、具体的に書いていただきたく、署名者は老幼男女を問わず、宗教関係者や外国人等であれば一層有効です。数は多い程よく、すでに四千人、五千人集めて居られる人もいます。


金井弁護士の手紙からは幕田大尉をなんとか極刑から救いたいという切実さが伝わる。湯川弁護士からのはがきは、幕田の法廷での答弁が堂々としていて称賛など、悲観的な文言は全くないが、金井弁護士の手紙では、逆に正々堂々と斬首を認めている幕田にはそれなりの重い刑が言い渡されることを予想して、嘆願書の署名集めにトメを奮い立たせようとしている。