春闘で昨年並みの賃上げを期待

一方、名目賃金の方は、どうでしょうか。昨年の春闘では連合集計で5.25%と2年連続で5%を上回る、画期的な賃上げが実現しました。26年の春闘についても、新春、経営者の口からは「今年も5%以上」などと、賃上げに前向きな発言が相次ぎました。経済団体も政府も、引き続き、賃上げの旗を振っており、昨年の5.25%を越えられるかどうかはともかく、昨年並みの5%前後の賃上げは、可能性が高いと見られています。

アメリカの関税政策の影響で、輸出産業の一部では減益が避けられないものの、相互関税の日本経済全体への影響は限定的にとどまっている上、インフレの影響によって、売り上げや利益、株価といった経済の名目値が伸びていることもあり、全般的に業績見通しは堅調だからです。

今春闘で昨年並みの賃上げが実現し、4月以降、その分、名目賃金が引き上げられれば、物価高対策によって一時的に実現した実質賃金プラスが、4月以降も定着させられる可能性が出てきます。

実質賃金プラス化の計算シナリオとは

ここで注意が必要なのは、春闘の賃上げ率は、いわゆる定期昇給分を含んだ数字の上に、労働組合が存在する、比較的「恵まれた職場」の数字だという点です。

発表される賃上げ率は、同一人物の昨年対比なので、年功序列型の賃金体系を採用している多くの日本企業の場合は、年齢が上がると自動的に給料が増える定期昇給分と、賃金体系そのものであるベースアップ(ベア)分の2つの部分から構成されているのです。大手企業では定期昇給分が2%ぐらいあるので、5%賃上げと言っても本来の賃金上昇であるベア分は3%程度なのです。

ベア分が3%で、最近のように物価上昇が3%以上あれば、実質賃金は良くてトントンでしょう。連合集計対象外の企業では、一般的にベア分が大企業より低くなる傾向があるので、勤労者の平均でみれば、実質賃金はマイナスになるのは当たり前です。

4月以降のシナリオとしては、春闘で少しでも高めの賃上げを実現すると同時に、物価上昇率を目標の2%程度に抑えることが重要です。5%賃上げ、つまりベア3%で、物価が2%に落ち着いて、初めて実質賃金がプラス1%、働く人全体で見ても、コンマ何%かで、何とかプラスになれば良い、という計算式になります。