実質賃金プラスは「成長」の最低条件

日本の消費者は3年以上にわたって、実質賃金マイナスに耐えてきました。実質所得がマイナスと言うのは、この間、貧しくなったということです。上述のように、今年仮に、高い賃上げと物価の抑制に成功したとしても、実質賃金のプラスは僅かなものに留まりそうです。その上、この3年半のマイナスの間に、家計は、貯蓄を取り崩すなど相当縮んでおり、消費マインドの改善・回復には、プラス化後も相当な時間がかかるでしょう。プラス化はその第一歩に過ぎません。

そもそも、実質賃金のプラス化は、高市総理が大好きな言葉である「成長」のために欠かせないものです。個人消費は日本のGDPの6割以上を占めています。所得の拡大なしに、消費の拡大や経済成長は不可能です。物価と賃金の「好循環」実現のためにも、消費拡大による需要拡大が必要です。

また、需要の拡大が物価上昇につながるという経路ができて、初めて、日銀が目指すとしている、コストプッシュだけによらない、「基調的物価上昇率2%」の世界が確かなものになるからです。

高市政権への高い期待を失望に変えないために

長期的な成長のために、危機管理投資も結構ですが、足もとの経済安定と成長のために、まず、実質賃金のプラス化と、その定着こそが、経済政策の最優先課題と位置付けられるべきでしょう。それがなければ、高市政権への国民の高い期待は、失望へと転化するリスクがあります。

その期待に応えるためにすべきことは明白です。高い賃上げと物価の抑制です。一番やってはいけないことは、円安をさらに進めてしまうことです。高市政権が政策のプライオリティー(優先順位)を間違わないかどうか、この数か月がとても重要です。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)