深海8000mでケーブルが切れたら? “世界一難しいクレーンゲーム”とは
こうして海に敷かれたケーブルは、通信事業者によって24時間監視されている。
万が一故障が発生すると、連絡を受けたケーブル敷設船がただちに光信号の減衰などのデータを解析、ケーブルが切れた場所を特定した上で海に出動する。
いわば、海底ケーブルの“救急車”だ。
そして、私が取材する中で最も気になった「深海8000mでケーブルが切れた場合、どうやって修理するのか?」という疑問。

まず、GPSを頼りに故障地点の真上に船を止める。
そこから、人の背丈ほどの巨大な錨を6時間かけて水深8000mの海底へ落とす。

次に、その錨を12時間かけて慎重にケーブルに引っかける。そして、いかりに引っかかったケーブルをさらに12時間かけて船へ巻き上げる。
ケーブルを引き上げる一連の動作で24時間以上かかるという、まさに“世界一難しいクレーンゲーム”。

最も大変なのはせっかく引っかけたケーブルが途中で外れてしまうこと。ケーブルは海流に流され、どこに行ったのか分からなくなる。

ーー失敗したとき、みんなすごくがっかりしませんか?
NTTワールドエンジニアリングマリン 桜井淳 船長
「すごいがっかり、とんでもないがっかり感があります。水深1000mくらいまではテンションがかかっていて、それが抜けちゃったときはもうどこいっちゃったかわからないので。もう幹部会議ですね(笑)」
その場合は再び海底でケーブルの位置を探すところからやり直し。一日が完全に無駄になり、「船内にため息が広がる」と桜井船長は話す。
やっとの思いで切れたケーブルの両端を引き上げると、船上で48本の光ファイバーの接合を行い、それにカバーを取り付けて再び海に落とすとようやく修理が完了。深海での作業の場合、1度の修理で1か月弱の時間を要する。
最先端のハイテク通信を支える海底ケーブルだが、それを支える作業は思いの外“アナログ”で、とてつもない人手がかかるのだ。
しかし、こうした現場の多大な努力によって支えられている通信の要・海底ケーブルは今、不審船による“故意の切断”という新たな脅威にさらされている。
なぜそのようなことが起きているのか?
最前線ーー台湾海峡へ向かった。
【後編につづく】
TBSテレビ報道局経済部 室谷陽太

















