安倍晋三元総理を銃撃・殺害した罪に問われている山上徹也被告の裁判。

 審理の最終日である12月18日(木)の第15回公判で、安倍元総理の妻・安倍昭恵さんの代理人弁護士が意見陳述を実施。「政治家安倍晋三が、私にとってかけがえのないたった1人の家族でした。最期に言葉を交わせず、突然失った喪失感は一生消えることはない。被告人には、自分のしたことを正面から受け止め、罪を償うように求めます」と、昭恵さんの言葉を読み上げました。

 昭恵さん本人は、18日の公判には出廷しませんでした。

▼ついに結審へ 争点は量刑

 山上徹也被告は2022年7月、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で、参院選候補の応援演説を行っていた安倍晋三元総理(当時67)を、手製のパイプ銃で銃撃し殺害したとして、殺人などの罪に問われています。

 今年10月の初公判で山上被告は、「すべて事実です。私がしたことに間違いありません」と起訴状で指摘された行為をすべて認めた一方、「法律上どうなるかは弁護人の主張に委ねます」と述べました。

 弁護人は、武器等製造法違反など一部の罪について、罪の成立を争う構えを示しています。

▼「『あなたが危険な目に遭ったらどうするの』と訊くと『政治は命がけでやるものだ、そのときは立派なコメントを出してくれ』と言われた」

 12月18日(木)の第15回公判で、安倍元総理の妻・安倍昭恵さんの代理人弁護士が、昭恵さんの陳述書を読み上げました。

安倍昭恵さんの意見陳述書(代理人が読み上げ)

「『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』。夫・安倍晋三の思いです。夫は、国民が日本人であることに誇りが持てる、そんな国にしたいと言っていました」

「夫の身を案じ『あなたが危険な目に遭ったらどうするの?』と訊くと、『政治は命がけでやるものだ、そのときは立派なコメントを出してくれ』と言われました。その時は『嫌ね、縁起でもない』と冗談だと思っていましたが、本当にそんな日がくるとは夢にも思いませんでした」

「被告人の撃った銃弾は、ブルーリボンバッジを弾き飛ばしました。夫が政治家として成し遂げたかった悔いがあるとすれば、その1つは、間違いなく、銃弾に弾き飛ばされた拉致被害者と、その御家族への思いだったと思います。でも、弾き飛ばされたブルーリボンバッヂは割れることはありませんでした。拉致被害者の救出をするんだという、夫の強い意志の現れのように、割れずに私の元に戻ってきました」

「ある日、自分が犯罪被害者遺族になりました。私は衝撃で頭が真っ白になり、かなり長い間、夢の中にいるようでした。夫の母は、自宅で亡骸となった息子と対面しました。息子を失い、ふさぎ込むことが多くなり、昨年2月4日に他界しました。ついに、私は1人残されました。街を歩いていても、行き交う家族連れなど、何気ない日常風景を見て、自然に涙が落ちることがあります。夫のことを思うと涙が出て、自然の感情を止めることができません」

「私にとっては政治家・安倍晋三であると共に、かえがえのないたった1人の家族です。最期に言葉を交わすこともできず、突然夫を亡くした喪失感は一生消えることはありません」

「被告には、自分のしたことを正面から受け止め、罪をきちんと償うよう求めます」