目の前に現れた幻影「怖かったよね、痛かったよね」

 9月29日、両親は事件現場で娘の最期を知ることができた。DNA鑑定の支援がなかったら、永遠に最期の様子をわかることはできなかった。酒井さんはこの体験でようやく原点に立つことができたと話す。

「事件が起きてから、麻希が病院に搬送されるまでの間が、私たちとって空白の時間になっていました。この時間が埋まらない限り、私たちの心が前に進むことはありません。なぜならば、娘が一番苦しい思い、辛い思いをした時の瞬間のことを親として分かってあげることができなかったからです」

そして、こう声をかけたという。

(酒井肇さん)
「本当の最後まで頑張ったんだね。怖かったよね、痛かったよね、辛かったよね。そして今までそのことが分かってなくてごめんね」

 小さな子どもですから、親でも分からないほどの恐怖感があっただろう。刺された後は想像を絶する痛みを感じただろう。それでも一歩でも前へ進もうとした。「何としても生きたかったという麻希のメッセージだろう」と酒井さんは話した。