平和利用ゆえの足かせか

「おおすみ」を打ち上げるラムダ4Sロケットには、地球周回の軌道に乗せるために必須とされていた「誘導制御装置」が付いていませんでした。

民間開発のロケットとはいえ、政治状況と無縁というわけにはいきません。

これは当時の野党第一党・日本社会党などから「誘導装置はミサイルの開発につながり、軍事技術への転用が可能」だとして、猛反対を受けていたからです。
当時の日本社会党は「非武装中立論」をとっていて、軍事転用技術の開発などもってのほかだったのです。

ロケットに書かれる「〇号機」の数字は5まで増えました。

しかも使用されたのは固体燃料でした。これは費用の問題だったとされます。固体燃料のみで人工衛星を投入する方式は世界的にも難易度が高く、挑戦的な計画でした。

世界でも異例の「完全無誘導4段式ロケット」

誘導装置を搭載できなかったため、ラムダ4Sロケットは、ほぼすべて事前プログラムだけで飛ぶ“無誘導ロケット”になりました。
「事前プログラムのみの姿勢制御」「推力調整なし」「完全予定飛行」「一度狂うと修正不可」これが技術者たちに課せられたハードルでした。

鹿児島の内之浦から打ち上げられたロケットはついに軌道に乗りました。

このため 初期の4回連続失敗につながったとも言われています。
それでも5号機で成功したのは、技術者たちの絶え間ない努力と研究の結果だったのは間違いありません。