ダークホースのシスメックスを率いる永田監督とは?

1区には永長、後藤以外にもエース級が多数出場する。天満屋は昨年のクイーンズ駅伝1区区間2位の𠮷薗栞(26)、ダイハツは5000mでも絶好調の西出優月(25)、京セラは昨年の大学駅伝エース区間で連続区間3位の尾方唯莉(23)、センコーはトラックのスピードがある下田平渚(27)、シスメックスは5000m15分29秒12の石井寿美(30)ら。天満屋とダイハツはクイーンズ駅伝上位常連で、代表選手を何人も輩出してきた名門チーム。今回はチーム状況が万全ではないが、1区で好位置に付ければ優勝争いを展開できる。

注目したいのは、関係者の間で評価が上昇しているシスメックスだ。エースの尾崎光(21)は昨年のプリンセス駅伝5区で区間2位、チームの4位通過に貢献した。今季は1500m、3000m、5000m、10000mの4種目で自己記録を更新し、全日本実業団ハーフマラソンでは1時間10分49秒で6位と健闘した。

昨年のインターハイ1500m3位(日本人1位)、3000m7位(日本人3位)の穗岐山芽衣(19)と、立命館大で昨年の全日本大学女子駅伝5区区間2位、富士山女子駅伝では7区区間賞の中地こころ(23)が加入。1区・石井、2区・穗岐山、3区・尾崎、5区・中地と強力なメンバーで臨む。

高知山田高で尾崎と穗岐山を育てた永田克久氏が今春監督に就任。高校では「努力、根性、義理、人情」の指導方針だったが、実業団では「個に応じて最適の指導」を心がけている。目標は4位以内。「前回の成績以上、トーナメントで言えばベスト4」という設定の仕方をした。「1区で20秒以内の差で渡すことができれば、2区で3位以内、あわよくばトップに立てます。3区で先頭争いができれば、4、5、6区は安定した走りができる」。

高知山田高では監督在任29年間すべてで、全国高校駅伝に出場。長距離が強いとは言えない地域で奮闘した。全国トップレベルの選手も育て、レベルの低い選手も底上げをして駅伝で勝ち続けてきた。シスメックスは04年アテネ五輪マラソン金メダリストの野口みずきが、05年から所属したチーム。07年の東京国際女子マラソンに優勝し、北京五輪代表を決めたのはシスメックス在籍時だった。

永田監督は目標に「駅伝では日本一。個人では野口さんに続く、オリンピックや世界陸上で活躍する選手を育てること」を掲げる。同じように高校指導者から実業団指導者に転身した小出義雄氏(故人)が、チームをクイーンズ駅伝優勝に導き、そのチームから五輪メダリストを輩出した。簡単なことではないが、その第一歩をプリンセス駅伝で踏み出す。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

*写真は左から三井住友海上・樺沢和佳奈選手、ユニクロ・後藤夢選手