もっと見たかった「19番目のカルテ」

田幸 「19番目のカルテ」(TBS)が印象に残りました。総合診療科という題材のピックアップがいい。私の高校時代の友人にまさに総合診療科医がいます。総合診療科という言葉を初めて聞いたのは彼女が医師になった二十数年前で、そんな科があるんだと感心したんですが、浸透するまで意外と時間がかかったなと思います。

総合診療科の仕事のあり方をしっかり描いたところもよかったですし、病院の経営難も描かれていて、今医療物をやるときに経営問題はスルーできないと痛感しました。現実の医療にはお金を含めて問題が山積しているので、このドラマがこの題材を今描くことに意義があったと思います。松本潤さん演じる主人公も魅力的だった一方で、短かった…

影山 8話ですね。

田幸 もっとじっくり見たい題材でした。

倉田 私は、総合診療科について詳しくは知らなかったので、19番目の診療科として、そういうものがあるんだというところから始まりました。

おなかが痛いから内科に、けがをしたから外科にというのは誰でもわかりますが、仲里依紗さんが演じた患者さんは、全身に痛みがあるのに、どこの病院、どの診療科に行っても原因がわからない。こんなにつらくて絶望的な状況はないですよね。そういったときに窓口になってくれる「総合診療科」がある、それだけでも希望になると感じました。

あと、松本さんの師匠役の田中泯さん。もともとダンサーですが存在感が際立っていました。私は田中さんが好きなのでうれしかったです。

影山 偶然ですが、僕も甥が総合診療科医です。二十数年前、彼から「総合診療科に行こうと思うんです」と言われたので「何やそれ」と返したら「いろんな科がフォローし切れない部分を拾うんだよ」と言われて「それはおもしろい」と言った覚えがあります。

僕がコラムに、医療ドラマをやるときに病院経営の難しさを忘れてはいけないと書いたら、この作品の脚本の坪田文さんから「私も医療の現実に注目しているので、取り上げてくれてうれしかったです」という言葉を頂きました。坪田さんはその辺もよくわかった上で、上澄みだけではない部分も描かれたんだと思います。