「解決しない」のがすばらしい「僕達はまだその星の校則を知らない」
田幸 「僕達はまだその星の校則を知らない」(フジ)の主人公はスクールロイヤー(学校におけるトラブル等を法的に解決する弁護士)で、非常に現代的なテーマでした。取り上げる問題も、制服のジェンダー問題、いじめ、スマホによる盗撮と、まさに現在起こっている学校の中の問題を全部取り上げるぐらいの意欲作でした。
いろんな問題を取り上げつつ、どれも話題性狙いになっていない。問題が非常にリアルで、簡単に解決しないところもそのまま見せている。もともと男子校と女子校の統合によって起こってしまった問題がたくさんあって、わかり合えない人たちが、わかり合うための一歩を踏み出す。解決はしないけれど考えるきっかけにはなる、その導きが本当に丁寧でした。
今、学園物が一つのトレンドになっていると感じますが、昔みたいにワイワイ楽しいというものではありません。「御上先生」(2025・TBS)でも取り上げてきた「個人の問題は社会の問題」、これがこの作品でも描かれているんです。
社会のシステムがもう限界なのに、それをそのままにしてしまっていることを、学校をとっくの昔に卒業している私たち大人も考えさせられる。そしてつくり手は、今の学生の置かれた複雑で大変な状況に対して、とても温かいまなざしを投げかけている。それが魅力でした。
同時に「大人が悪い」のではなくて、大人にだってケアが必要だと伝えている。大人ならいろんなことがわかっていて、いろんなことができるわけじゃない。大人もみんな悩んでいるんだという、隅々にまで目の行き届いた優しい物語でした。
倉田 優しい物語と厳しい現実のバランスがうまくとれていました。優しいだけだとつくり物感が出てしまうし、厳しい現実だけ突きつけられると見続けるのがしんどい。つくり手の意識がすごく高いと感じました。
個人的に楽しみだったのが、磯村勇斗さん演じる白鳥弁護士が発するオノマトペ。「ムムス」とか。脚本の大森美香さんの造語だそうですが、白鳥弁護士という独特な感性を持った人物を表現する上で、やはりこの人何か違うなと、オノマトペだけで伝わる。大森さんの言葉に対するセンスを感じました。
影山 主人公の人物造形がいいですね。磯村君の内省的な描写がすばらしい。目をみはるものがありました。
僕の世代にとっての青春ドラマは、村野武範さんの「飛び出せ!青春」(1972・日テレ)とか、中村雅俊さんの「われら青春!」(1974・日テレ)で、非常にシンプルです。グレているといっても、正味50分の中で解決して最後は窓から飛び出して海へ行く。そういうのどかな時代を経て、様々な問題を抱えている難しい時代にフィットした、ふさわしい青春ドラマになったと思います。かつての青春ドラマをディスるつもりはなくて、自分にとっては本当に宝物ですが、50分の中で「解決しない」すばらしさですね。
それから、人の数だけ正義があるというか、立場が変われば何が正しくて何が間違っているかも変わる。だから、法律で裁けることはごくわずかなんだということも見せてくれました。