生きる希望をひと目でも…「トラベルドクター」で万博へ

由紀子さんが抱える難病「筋ジストロフィー」には根本的な治療法がありません。徐々に衰えていく自分の筋肉に不安を抱えながら病気と向き合う日々。

「病気のことを考えないようにしてきた」
「ひと目見たら前向きになれるかもしれない」

iPS細胞で筋肉を再生できないか。iPS細胞の研究の進歩こそが、由紀子さんの生きる希望です。

とはいえ、人工呼吸器に24時間つながれたままの現在の病状で旅行は難しい…と思っていたところ、由紀子さんの希望を後押しする情報が届きました。病院の相談員が「トラベルドクター」という会社の存在を知らせてくれたのです。

「トラベルドクター」とは、医師の伊藤玲哉さん(36)が運営する“医師同伴の旅行会社”で、終末期や病気などで旅行をあきらめていた方のサポートをしてきました。2020年の創業から5年間で、300組近くの「病気でも旅行がしたい」という願いを叶えてきた伊藤医師に、早速、万博旅行を申し込みます。

自前の福祉車両で現れた伊藤医師。ミャクミャクの風船をつけた万博コーデのストレッチャーで、由紀子さんをお迎えします。

緊急時に備えて、移動手段は車のみ。医師・看護師ら5名のスタッフが常に同伴します。こまめにパーキングエリアで車を停め、痰の吸引や呼吸の空気が漏れないようにする作業を行いながら、10時間かけて関西へと向かいます。

由紀子さんは車の中で、壮絶な半生を語ってくれました。