大阪・万博をめぐっては海外パビリオンの建設工事費の未払いが問題となっています。工事費については、11の海外パビリオンで30以上の建設業者が未払いを訴えていて、中には裁判に発展しているケースも。
 
 そんな中、「閉幕後にも問題は絶対に起きると思う」と業界関係者が指摘。“新たな未払い問題”を取材しました。

昼夜を問わず力を合わせ作業 開幕ぎりぎりで完成したマルタ館

 「たった1年でこんな状況になってしまうっていうのは、本当に悔しくて残念で仕方ないです」

 こう嘆くのは京都府内で建設業を営むAさん。万博で地中海の島国「マルタ共和国」のパビリオン工事を1次下請けとして担当しました。
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 参加する国が独自に建てるパビリオンの中で最後に着工したマルタ館。Aさんは何とか開幕に間に合わせようと、昼夜を問わず作業を続け、開幕ぎりぎりで完成させました。

(マルタ館建設・1次下請け Aさん)「工事やってるときはすごく寒かったんですよ。ベンチで夜通し凍えながらみんなで力を合わせてやりましたね」

 しかし、元請け業者の「GLイベンツジャパン」から、工事費用の一部が支払われていないといいます。理由は「工期の遅れなどによるペナルティが発生していて、支払える金額は残らない」などと説明されました。
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 AさんはGLイベンツジャパンに対し、「不合理な苦情を述べて工事費用を支払わない」などとして、契約金の一部と追加工事費用、計約1億2000万円の支払いを求めて東京地裁に訴えを起こしました。

 提訴から約4か月。苦しい経営状態が続くなか、従業員が1人、また1人と辞めていき、これまでと同じ規模で工事を受注することも難しくなっています。

(Aさん)「われわれにとってはこれは本当に災害と同じ、大きな事故に巻き込まれた。最低限、今を乗り越えるための力を貸していただきたい」

 10月6日、Aさんは未払い問題の調査で大阪にやってきた与野党の国会議員に対し、窮状を直接訴えました。

(衆議院・経産委員会 宮崎政久委員長(自民))「ご自身の実情などを、率直なところでお聞きしたので、困窮の度合いが高いということについては理解をした」
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(Aさん)「これはものすごく大きな社会問題。これからの日本の建設業を守っていくためにも、お金ももちろん大事ですけども、それ以外に根本的なことを解決していく、これに(国会議員には)全力を注いでほしい」

 博覧会協会はこうした未払い問題について、「民間同士のトラブル」だとして、立て替え払いや資金繰りの支援などをすることはできないとしています。