若者の失業率「実態は50%超」?
トランプ関税は、若者の失業率にも大きく影響している。
【中国 8月の失業率】※国家統計局
▼全体⇒5.3%
▼16-24歳⇒18.9%(2023年12月の統計方法変更以降で最悪)
▼25-29歳⇒7.2%
▼30-59歳⇒3.9%
調査対象には元々「出稼ぎ労働者」は含まれていないが、 柯隆さんによると、2023年12月からはさらに「就職活動をしていない人」、「親と同居している人」も除外されたという。
――実態は18.9%どころではない
『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「清華大学の研究チームの調査では、“実際は30%を超えている”と言われているらしい。また、先ほどの深圳で職探しをしているような出稼ぎの人を入れると50%を超える。このまま若者が就職できないとなると、自暴自棄になって社会に対する報復、犯罪に走る可能性が出てくるので、ものすごく治安が悪化して社会不安になる」

柯隆さんによると、中国の大学卒業は6月末で、卒業した学生が就職できず「7月は失業率が上がる」とのこと。しかし通常なら、その後は下がるか最低でも横ばいだというが、今回は8月にさらに上昇した。
柯隆さん:
「8月はアメリカへの輸出がマイナス33%だった。それでさらに解雇された人もいて18.9%に上がった。トランプ関税の影響が8月になって出てきたということ」
――若年層の失業率がどんどん高くなり、不況が深刻化しているとここ数年言われてきた。そこに手を打てていないということか
柯隆さん:
「一番雇用を作れる中小企業がコロナでたくさん潰れてしまった。もう一つは、飲食店。25年1-7月で、全国で270万店舗が閉店になった。客が食べに来ないから。それで若者の就職口がない。要するに負のスパイラルの状況。失業率が上がる⇒生活防衛で消費が伸びない⇒設備投資の抑制・飲食店も潰れる⇒失業者が出る。日本の“失われた30年”の入口とよく似てきている」
中国経済「迷路の出口」は?
8月の消費者物価指数も「前年同月比-0.4%」と、3か月ぶりのマイナスとなった。

『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「中国は本来、14億の人口だから物価がマイナスになりにくい体質を持っている。それでも最近見ているとマイナス。あと卸売物価、生産者物価指数(PPI)はずっとマイナスが続いている。つまり企業が設備投資をしない、そうすると工業製品が売れない。消費者物価というのは、日用品、食料品などが入ってるので、“完全にデフレ状態に陥っている”」
――その上、不動産不況の出口が見えない状況がずっと続いてる。経済を正常化していく政策的な舵がなぜ切れないのか

柯隆さん
「やはり人間は期待値を持つ。特に政策立案者が『あと半年ぐらいしたらリカバリーされるだろう』と。かつて日本も同じことを考えて、時間をロスして気がついたら30年失われた。中国の政策立案者は今まさに同じことを考えている。もう1つは、今の中国では自由な言論ができないので、習近平主席の耳に都合の悪い情報が入りにくい。そうすると正しい政策が決断されない。これが多分一番困る。今のところ“迷路からの出口は全く見えてこない”」
(BS-TBS『Bizスクエア』2025年9月27日放送より)