「芸術は人を人間として認識させる」

ユーゴ内戦を取材した記者=© 2023 FIFTH SEASON, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

関根:監督は、「私たちはこうあるべきだ」ということをインタビューで答えてくれました。私たちは基本的に皆一緒なんだ。戦争は無意味だということを本当に伝えたい、ということでした。

関根:「音楽や芸術の平和に貢献する役割は何ですか?」と聞いてみたんです。監督はシンプルに答えました。

『芸術ができることは、人々を人間として認識させることなんだ。たとえ敵だと思われる人が作った音楽でも、いい音楽を聴いた時に「この音楽を作ったのは何人か」と想像しないじゃないか。ただ単純に、「なんて素晴らしい音楽なんだ」「なんて素晴らしい絵なんだ」と思うのが、芸術の力だと思う。芸術は人と人との関係性を豊かにして、近づけて人間同士だと感じさせてくれる。』

関根:「この力によって平和を作りたい」と監督は言っています。

神戸:映画の公開が始まります。

関根:もちろんU2のファンの皆さんには観ていただきたいですが、U2を知らなくても、かなりいろんなポイントで感動できる映画だと思います。1人1人が極限の中で力強く生きている姿を見ることで、私たちも勇気がもらえると思うんですよね。日々をもっと頑張ろうぜ、と思うポイントがたくさんあると思います。

神戸:ユーゴスラビア紛争については知らない方も増えているかと思いますが、私が読んだ本の中では、柴宜弘さんの岩波新書『ユーゴスラヴィア現代史』(新版)があります。新書なので、手に取りやすいかと思いますので、もし関心がありましたら読んでみてください。そして、この映画『キス・ザ・フューチャー』をご覧いただければと思います。

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。学生時代は日本史学を専攻(社会思想史、ファシズム史など)。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。東京社会部勤務を経てRKBに転職。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材にしたドキュメンタリー映画『リリアンの揺りかご』(2024年)は各種サブスクで視聴可能。最新作のラジオドキュメンタリー『家族になろう ~「子どもの村福岡」の暮らし~』は、ポッドキャストで公開中。