反日映画の連続公開が示すもの

習近平主席は今月3日、天安門広場で「抗日戦争勝利80周年」を記念する大規模な式典を開いたばかりです。この映画『731』もまた、この節目に合わせたキャンペーンの一環と見ていいでしょう。

予告編や、中国国内の映画館で盗撮され、違法に流出した映像を見たところ、映画『731』は生体実験の対象となった中国人捕虜の過酷な運命を描いており、残酷なシーンが次々と登場します。

今年は、日本軍が多くの中国人を殺害した「南京事件」を題材にした映画『南京写真館』や、日本軍の貨物船が沈没した際に中国人漁民が、捕虜としてこの貨物船に乗っていたイギリス兵を救出した実話に基づく映画『東極島』など、日本軍による中国市民や捕虜への暴力を描いた作品が次々と公開されています。

これらの映画に共通するのは、「日本の戦争行為を題材にするなら、なにをやってもいい」という、商業主義的な側面です。史実から逸脱し、過度な脚色を加えたエンタメ色が濃い作品も少なくありません。

「日本叩き」のジレンマ

習近平政権は、このような映画を奨励しているのでしょうか? 私は、奨励はしていないと思います。このような映画が公開されれば、日本人の対中感情はさらに悪化します。トランプ政権との関係が不透明な中、習近平政権は対日関係の悪化を望んでいないはずです。

一方で、「日本叩き」を大きく抑制できないのが実情ではないでしょうか。これまで「日本叩き」を利用してきた過去のツケが、今になってマイナスに働いているように感じます。

せめてもの抑制策として、映画の公開日の変更があったようです。当初、映画『731』はタイトルにちなんで7月31日に公開されると予告されていましたが、9月18日に変更されました。この「918」は、満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日であり、中国人にとっては今も「国辱の日」とされています。当局と映画制作者サイドの妥協点が、この9月18日だったのかもしれません。

公開初日に映画を見た人のSNS上のコメントには、「審査でカットされた場面が多くて、シーンがつながっていない」という声が目立ちました。私も映像を見ましたが、確かにストーリーがギクシャクした印象を受けました。