負の歴史に学ぶ 教訓にするには?
(山本典良園長)
「負の歴史に学ぶということをね、ちょっと話をしようと思います。ハンセン病、これは負の歴史ですね。他に負の歴史に何があるかというと、アウシュヴィッツと広島原爆ドーム。これは世界遺産に登録されています。
アウシュヴィッツ、ホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人を中心とした大量虐殺)については、ドイツ人はどのように教訓としているかというと、最初の30年間は、いわゆるナチスの犯罪という教え方をしていたのですね。
ナチス、ヒトラーがこういう悪いことをした。そういう教え方をしていた。それではドイツ人の教育にならない。教訓とならないということに30年後に気づいたのです。
どういう教えになったかというと、ナチスの犯罪からドイツ人の責任へと展開して教訓としたわけです。ナチスによるホロコーストの時に、ドイツ人は何をしていましたか?見て見ぬふりをしていた、協力していた等々。その辺の責任はどうかということに関して、教訓としたわけです。
原爆ドームについては、(慰霊碑の碑文にあるように)「あやまちは繰返しませぬから」なんですよね。「あやまち」が、1945年に原爆の被害があり、(慰霊碑の碑文は)1952年にできた。7年後にもうすでにね、「繰返しませぬから」として教訓としています。
普通に考えたら『繰返しさせませぬから』なんですよ。アメリカに原爆を落とさせない。日本政府に戦争をさせない。でも『繰返しませぬから』として教訓としているわけですね。
ハンセン病も教訓とするためには、『国が悪かった、光田健輔が悪かった』という風に人に押し付けただけでは教訓にならないのじゃないかなというのが私の思いなのです。
ハンセン病療養所を残す意義としては、広島県には、原爆ドームがあって『過ちは繰返しませぬから』と反省と誓いができ、恒久平和を祈念する場となっている。
それと同様に、岡山県にはハンセン病療養所があり『偏見差別を繰り返しません』と誓い、偏見差別のない寛容で誰一人取り残さない共生社会の実現を祈念する場にしたいなと思っています」
(山本典良園長)
「私は、最近(長島愛生園の)見学者に質問することがあるのですけど、原子爆弾の被爆者が被害者ですね。では、加害者は誰ですかという質問します。
1番、アメリカ。2番、日本国。3番、国民。
大体の人が、アメリカと日本政府、国が加害者だと。国民が悪いという人はあまりいないです。でも『あやまちは繰返しませぬから』なんですね。
ハンセン病療養所。これも見学者に挙げてもらうのですけど、ハンセン病患者は、被害者です。では、加害者は誰ですか?
1番、療養所の職員、2番、日本国、3番、国民。
これは、団体によって多数派が違います。ただ、私が質問しているので、ハンセン病療養所の職員と手をあげる人はいません。国か国民か。団体の属性によって、どちらが多いかというのが分かれるところですね」