「足りない廃食用油」どう対応?
しかし、SAFの量産化はまだ始まったばかり。
【2030年までに航空燃料の10%をSAFに置き替える】という政府目標を達成するには、現状は原料となる廃食用油の量が足りないという。
『コスモエネルギーホールディングス』山田 茂社長
「政府目標を量に直すと年間170万キロリットルぐらいになる。そうすると(国内での年間廃食用油量)50万トンは単位を直すと60万キロリットルぐらいなので、全然合わない」
――そうなると、今後どうやってSAF事業を拡大していく?
山田社長
「SAFの作り方はいくつかあり、一つは我々がやっている食用油を原料にして作るやり方。二つ目は、非可食の植物、茎とか葉っぱを使い、エタノールにしてSAFにする。計画としてはバイオエタノールを使ったSAFを、香川県にある我々の坂出物流基地で作りたい」

――将来はジェット燃料と同じ価格まで下げることを目指すのか、あるいは高いSAFを世の中に受け入れてもらうという方向なのか
山田社長
「理想を言えば石油由来のジェット燃料の価格に近づいていくと。我々はそういう努力は常にやっていかなきゃいけないが、従来燃料と同じ値段にすることは難しい。使っていただける方に、きちんと理解をしていただいて“一定程度コストを負担していただく”ということも必要かなと思っている」
すでに国際航空貨物では、グリーンエネルギーの物流をする企業が負担をして、SAFプログラムにのった料金を払って荷物を運ぶということも増えてきているとのことで、「まずはそういうところから広がると非常にいい」と考えているという。
今後のエネルギー戦略
では、今後の事業展開の中で「SAF事業」はどういう位置づけにあるのか。

山田社長は、2030年を少しこえたところまでは化石燃料が自動車や飛行機・船といった燃料の主力になっていると予測したうえで、その先を見ていると話す。
『コスモエネルギーホールディングス』山田 茂社長
「その後、自動車は顕著だがEV等々もかなり普及してくる。その時に化石燃料に代わるエネルギーとしてSAFもそうだし、バスやトラックについてはEVではなくFCV(燃料電池車)のような水素を燃料にした動力、こういったものも普及する可能性があると思っている。そういったところも今取り組んでいる」
――コスモといえば石油会社とみんな思っているわけだが、どういう企業に変わっていきたいと考えているのか
山田社長
「まだまだ石油が我々の事業の中心を占めているのは間違いないが、グループの名前が『コスモエネルギーホールディングス』なので、化石燃料に関わらずエネルギー全般を安定的に供給する会社を目指す。SAFの事業としては全体に比べると非常にまだ小さい事業ではあるが、新しい取り組みでありグループの中でも一つのポイントとして目玉として発信できたと思っている」
最後に、脱石油時代を見据え石油業界の再編が進む中で「コスモが目指す立ち位置」をたずねるとー
山田社長
「これ以上業界再編のようなことが起きるとはなかなか考えづらい。安定的に供給するという意味では今の体制は非常に必要な体制になっているし、石油需要自体は比較的安定しているので、各社次のエネルギーを探していくような状況になっていると思っている」
――現時点では独立したグループとして十分やっていけると
山田社長
「現時点というか、これからずっとやっていけると思っている」