■総理の葛藤は年を越し・・・堀内ワクチン大臣「私は6か月と主張した」

12月に一部の前倒しを表明した岸田総理。だが、その打ち出しは限定的だった。手元の在庫はあるものの、この時点で、ワクチンの供給量に確約がなかったからだ。しかし・・・

「前倒しの対象をもっと広げたい」

岸田総理や側近は、より幅広い対象への前倒しを摸索した。自治体ごとの判断で、年齢を問わずに前倒しを認める案も浮上していたという。堀内ワクチン担当大臣もこのように語る。

「私は一斉に6か月に拡大した方が良いと主張した。だが、配送量との兼ね合いもあった」

政府・与党内からも「ワクチンの効果は確実に6か月以降に低下する。できない自治体に合わせる必要はない」との声が大きくなっていった。

■「岸田政権になって官邸とワクチンの相談が減った」…二度目の「前倒し」が決定

そして政府は1月に入り、二度目となる「前倒し」の方針を発表する。2022年1月13日、岸田総理は、高齢者の接種間隔をさらに縮め、64歳以下の一般の人も前倒しの対象にすることにした。こうして、「65歳以上の一般の高齢者は6か月」に、「18歳から64歳の一般の人や職域接種は7か月」に短縮することが決まった。この時のことを政権幹部は、こう証言する。

「総理の思いがとても強く、できるだけ早くというのがこの日の前倒し表明となった。当時、自治体は間に合うのか困惑したが、準備は現時点ではほぼ追いついている。それよりも、何より国民の『打たなければいけない』という意識が低く、政府のメッセージが今はまだ弱い」

ようやく前倒しの方針が決まったが、政権のワクチン担当は振り返る。

「岸田政権になって、官邸とのワクチンについての相談や議論が減った」

■日本の現状 1日“100万回以上”の接種が必要、しかし・・・

内閣官房によると、3月までの希望する全ての人への自治体接種(計約6400万回)を計画通り進めるためには、2月以降、1日あたり平均“100万回以上”の接種スピードが必要だという。ところが現状は、1月は1日あたり10万回~30万回が多く、2月に入り、ようやく1日50万人を超えてきているというスピードだ。あるワクチン接種を担う内閣官房の幹部は語る。

「国民のモチベーション的にも、去年のように1日100万回近くにできる状況ではない・・・。非常に難しいが、一度目の12月の前倒しで高齢者を7か月間隔としたので、2月からの接種開始で準備をしていた自治体も多い。これから加速してくるとは考えている。ただ、ワクチン室の雰囲気も、政権が変わり、大きく変わったのが正直なところ。河野大臣と堀内大臣では、発信力にも違いはある」