米財務長官「日銀は後手に」

ベッセント財務長官の発言で、もう一つ注目されるのは、日本に言及したことです。ベッセント長官は「日本はインフレの問題を抱えている」と述べた上で、日銀の植田総裁と話したことを明らかにしました。そして、「これは植田総裁の見解ではなく私の見解だが、日銀は後手に回っており、利上げをするだろう」と、テレビカメラの前で述べたのです。閣僚が他国の金融政策を批判したり、他国の中央銀行とのやり取りを公にしたりすることは、極めて異例です。

ベッセント長官は、7日に行われた日本経済新聞との単独インタビュー(11日掲載)でも、「日銀がインフレ率や成長率に焦点をあてて金融政策を進めるならば、為替レートは自然と調整されるだろう」といわば「利上げのススメ」を語っており、今回はさらに踏み込んで日銀の早期利上げを求めたものです。為替レートの自然な調整、すなわち緩やかな円高ドル安を進めることで、貿易不均衡問題の解決にもつなげたいという思いをにじませたものと受け取れます。

植田総裁は繰り返し「後手」を否定

日銀の植田総裁は、先月31日の決定会合後の記者会見で、「ビハインド・ザ・カーブ=後手に回っているとは思わない」と明言しました。ベッセント財務長官は、それに対しまるで「ダメ出し」をしたかのようです。ベッセント長官に外堀を埋められつつあるのは、FRBだけでなさそうです。日銀は、またしてもガイアツで動くことになるのでしょうか。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)