アクション監督・田中信彦から学んだこと

主人公が未来予知を発揮するシーンで使われた“ざらざらした映像”には、朝倉氏独自の感覚が反映されている。
「台本に“ざらざらした映像”とあったので、そこから発想しました。異能力をデジタルっぽく表現したくなかったんです」。
こうした映像作りにおいては、アクション監督・田中信彦氏の存在も欠かせない。田中氏はアクションのビデオコンテを作る段階から、CGを駆使して映像の方向性や演出の意図を明確に提示しており、チーム全体の足並みを揃える指針となっている。
「表現の多くは自分で考えていますが、常にゼロから生み出しているわけではありません。田中さんとは事前の打ち合わせを通じて、多くのアイデアを共有しながら形にしていきました」。

実際、制作を進める中で迷いが生じた際には、田中氏のビデオコンテが立ち返る“原点”にもなっている。
「われわれは映像の中の細かいディテールの部分まで気を使って作業していますが、細かいところに気を取られ過ぎて根幹の部分を見失いそうになることもある。そんな時に田中さんのビデオコンテを見返すと、そこに込められたアイデアや思いが明確な指標となり、『やはりこの見せ方が映えるんだ』と再確認できる。作品づくりの心強い支えになっています」。
また、朝倉氏は、長谷川プロデューサーが「魔法使い」と評するほど、光の扱いにも定評がある。
「光の加減が不自然だと、映像全体が不自然に見えてしまう。だから光が実写となじむように気を付けています」。