「経営が成り立たない」中小企業の悲鳴

現在、最低賃金が951円と全国で最も低いのが秋田県だ。
秋田県の引き上げの目安額は64円。目安通りに引き上げられれば最低賃金は1015円になる。

大学生・神奈川県出身:
「秋田に来て時給900円台があった時は、正直ちょっと驚きだった」

大学生:
「物価の上昇は感じる。野菜とか超高いし。同じ時間働いて給料が増えるなら嬉しい」

一方、最低賃金の上昇に経営者からは“経営はもう成り立たない”という声も。

秋田県横手市にある農業法人『SEEDs』。
稼ぎ頭である「菌床シイタケ」は、品評会でも高い評価を獲得している。

売上に対する人件費の指数を計算し、その指数目標に向かって利益をコントロールするなどデータ管理による経営の効率化を図っているが、賃上げできる額には限界があると話す。

『SEEDs』熊切達也代表:
「最初に考えていた農業計画はあるが、最低賃金がこの5年で200円プラスになると、正直根底から変えなきゃいけない。他の資材も高くなっている。全てが高くなっている中で、人件費もこの上がり幅を考えると、時給1500円になれば経営はもう成りたたない」

SEEDsでは、全従業員14人のうち10人がパートとアルバイト。
最低賃金が上がることにより、“年収の壁”で労働時間短縮の懸念もあるという。

熊切代表:
「現状パートさんは基本的には扶養に入っている確率が高い。“社会保険料が発生する130万円の壁”までと上限が決まっている。130万円を稼ぐための時間数が減っただけで、実際お財布の中身は変わらないので、これが経済効果があるのかどうか」

「年収の壁」で働き控えの懸念

時給がこれまでの最低賃金1055円だった場合、週に20時間働き年間50週とすると
【2024年度】⇒1055円×週20時間×50週=年収105万5000円

時給1118円となった場合は
【2025年度】⇒1118円×週20時間×50週=年収111万8000円
一定の条件を満たす人は、社会保険への加入義務が生まれる。

【年収の壁】
▼106万円:社会保険料
▼130万円:社会保険料・住民税
▼160万円:社会保険料・住民税・所得税

――健康保険料や年金保険料を払うことになると手取りが減るので、働き控えをしてしまうのではないかと

『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「働き控えは誰にとってもよくない話。賃金が上がってきた状況を考えると、年収の壁があること自体がおかしい。政府が早く取り払うなど、何か改善をしないといけない。人手も足りないし賃金上がってきてこれだけ制約が出ていることに対して、何も政策をしないことのほうが、これからの日本を考えるときに問題」