「80年前の私の体験は物語ではないわけです。現実にあった事実。私が実体験をした事実なんですね」
7月、ある日の広島。静まりかえった教室で、高校生が耳を傾ける中、静かに訴える女性がいました。
河田和子さん、93歳。13歳のとき、爆心地から2・5キロ離れた工場で被爆しました。話に耳を傾けていたのは、広島皆実高校の生徒たち。河田さんの母校・旧県立広島第一高等女学校の後輩です。
戦後80年の節目で、伝えたいことはあるか。ひとりの生徒からの質問に、河田さんはまっすぐ前を見据え、声を震わせ答えました。

「川の底から……道路の下から、亡くなった方たちのうめき声が、まだ耳から離れてはおりません。80年経っても、全然それを忘れることはできない状態で、今、おります」