マインクラフトの活用×平和学習

「よくできた」と褒めた後、コマンドを走らせると、上空に赤い丸い球の爆弾が現れます。「これから火をつけます」と言うと、子どもたちは「やめて」と青ざめます。自分たちが頑張って作ったものが壊されるのは嫌だと、泣きながら訴える子もいます。「わかった、やめる」と消します。そして、「同じことが本当に起こったんだよ」と歴史に繋げます。すると、子どもたちは真剣に聞いてくれます。 戦争の悲惨な歴史は、写真や教科書だけでは伝わりにくい。子どもたちが作ったものが壊されるという感情で訴えかけられるのが、東京大学で取り組んでいる平和学習教育です。物を作るからこそ大切にして欲しいという気持ちをマイクらと通じて、伝えられます。
――浦上天主堂や当時の日石病院など、写真だけではわからない痛みが伝わります。
タツナミシュウイチ氏:
残酷な写真も多く、子どもたちにとって見づらいし、伝えづらい。地元には「覚えておいて欲しい」「二度と繰り返して欲しくない」という思いを持つ方が多くいます。マインクラフトを使ってポジティブに伝えることが、教育の一端を担っていると思います。
――自分が作った建物に魂がこもっていると感じますよね。
タツナミシュウイチ氏:
同じ気持ちで作った人たちがいたとわかってくれるだけで十分だと思います。
教育現場でマインクラフトを普及させるには?
――教育の場で使うには、先生方が習熟したり理解したりする必要があります。普及についてはどうですか。
タツナミシュウイチ氏:
そのために仕事しています。自分と同世代の方や先生、保護者から「ゲームですよね」と言われます。「どのくらいやらせていいか」と聞かれますが、時間をきちんと取り、目的意識を持って取り組むことで、教育のプラットフォームとして使えます。
マインクラフトを使うメリットは子どもたちが楽しんでくれること。どんなに素晴らしい知識が詰まった本も、興味がなければ触れられません。マインクラフトは子どもたちが「やりたい」と思うので、学びの要素を散りばめると、遊んでいるうちに吸収してくれます。テスト後に忘れる知識ではなく、大人になっても思い出せる知識になると思います。ゲームのデメリットだけにフォーカスせず、メリット・良いことも伝えるようにしています。