■交渉で停戦の兆しを“演出”か

こうしたなか、ロシアは3月29日、トルコのイスタンブールでウクライナと4回目の対面での停戦交渉を行った。ここでウクライナは、いかなる軍事連携にも参加しないことや大量破壊兵器を製造・配備しないこと、それを受け入れる条件として、第三国を「保証国」とする新たな安全保障の枠組みも提案、クリミアの帰属も今後15年かけて話し合っていくなどとした。これをロシア側は前向きにとらえ、キーウ周辺の攻撃の縮小などを表明した。しかし・・・

森本敏 元防衛大臣
「ロシアは全体の戦況は不利なので、外交交渉らしきものをやって時間を稼ぎ、その間に戦力の立て直しをする。部隊を再編してもう一回戦力を作り直す、時間を稼ぐためにやっている」

ロシア側は全く停戦などを考えているわけではなく、作戦だというのだ。そして、戦争が続いている中での交渉は敗けている側が折れるもので、ロシア軍が不利な状況となっている中で、ウクライナが妥協するような提案をしたことは考えられないと話した。さらにプーチン氏の立場から言っても、停戦の合意は不透明だとそれぞれの専門家も分析する。

拓殖大学海外事情研究所 名越健郎 教授
「プーチン氏は一定の戦争目的を達成したと国民に説明する必要がある。今のところ進展がありそうなのは、ウクライナの中立化だけ。しかし、中立化だけで国民を説得できるのか?合意に達するかどうかはまだ不透明だ。戦争は続いているわけで、戦況によっても落としどころは変わってくる。ますます戦闘が激化する可能性もある。予断を許さない」

森本敏 元防衛大臣
「ロシアによるキーウ中心の北部の作戦は基本的に失敗。従って東南部に戦力を集中させるために一旦下がって、もう一回部隊を再編してこちら(東南部)に入れる。ウクライナを東西で分断して東側を確保する、そういう戦略をとっているのかもしれない」

防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「ロシアによるキーウ周辺の動きは滞っていて、これ以上、中心部に進軍することは出来ない。その状況を上手く利用して、ロシアは外交交渉であたかも歩み寄っているかのような姿勢を示しているので、本当にキーウから撤退するのかどうかは見極めないといけない」

(BS-TBS『報道1930』3月30日放送)