■朝令暮改の連続も「むしろ柔軟な対応」?

これまでの岸田内閣の特徴のひとつは、度重なる“朝令暮改”だ。
政府の経済対策である「18歳以下への10万円相当の給付」をめぐってはその半額をクーポン券とする案が不評を買い、全額現金支給を容認した。最近では「年金生活者への5000円給付」についても当初岸田総理は前向きな姿勢を示していたというが、世論や自民党内の反発を受け、トーンダウン。最終的に、高市政調会長により白紙撤回となった。

「政策が二転三転している。優柔不断。こういうことが今の政治を遅らせている」

岸田総理の方針について、立憲民主党代表の泉健太氏はこう批判する。政府がブレ”や“混乱”を見せた場合、世論の支持を失うことにもなりかねないが、これほど朝令暮改を繰り返していても、支持率への影響は限定的だ。ある省庁の幹部は「岸田総理にはポリシーがない分、世論の反応をみてすぐひっこめる。これがむしろ柔軟な対応だと好意的に捉えられている部分もある」との見方を示す。


■参院選まで正念場国民生活“直結”の難題が山積

「そのときにやるべきこと、今であったらコロナ対策とウクライナ対策と物価対策こうした課題に、どれだけ正面から向き合うのか」

岸田総理は自ら3点を主要課題としてあげている。
オミクロン株の別系統『BA.2』の置き換わりが急速に進み、『第7波』の兆候が見られる中、十分な対策ができるかどうか。また、ウクライナ情勢が長期化すれば、原油や原材料、穀物など効果的な物価高騰対策を取れるかどうかが政権の行方を左右する。ただ、足元では今月末にまとめる経済対策の財源をめぐり、自民党が22年度予算のコロナ予備費などの活用を想定する中、公明党が補正予算案の編成を要求。さらに、菅前総理も早期の補正予算の編成が必要との認識を示すなど、政府・与党内で意見がまとまっていない。岸田総理の看板政策「新しい資本主義」についても、身内からも「何が新しいのかわからない」「ビジョンを示すのが遅い。スピード感がなくていらいらする」と手厳しい。

参院選まで残り3か月。勝利すれば長期政権も視野に入るが、コロナ対策や物価対策など国民生活に直結する課題ばかりで、舵取りを誤れば一気に批判の矛先が向く。

TBSテレビ政治部官邸キャップ
室井祐作