参議院選挙シリーズ「1票が”変える”未来」。今回のテーマは、これまでの選挙に比べ、議論が低調な印象を受ける「基地問題」です。

▼宜野湾市の有権者
「基地政策というよりも物価高騰と税金の問題ですね。それを対策していただきたいと思います」
▼名護市の有権者
「私は子どもが5人いてみんな小さいので、旦那とも話はするが、基地問題よりも今、物価高、生活の方が気になっています」
▼名護市の有権者
「問題としてあるのは分かるんですけど、今はそれより国民の生活が優先かなという印象です」

これまで沖縄選挙区で大きな争点となってきた「基地問題」。しかし、今回の参院選では、減税など物価高騰対策などの陰に隠れ、ややぼんやりした印象を受けます。



沖縄タイムス社が読者に行った調査では、最も重視する政策として全体のおよそ25%が「経済政策」を挙げていて、次いで「政治とカネ」が22.0%。「基地問題」は、「医療・社会保障」と並び、13%余りとなりました。

これまでの選挙と異なり、議論が低調な印象を受ける「基地問題」。その背景について、政治学が専門の関西学院大学の久保慶明教授は次のように指摘します。



▼関西学院大学 久保慶明 教授(政治学)
「長年の議論を経て政治的、あるいは政策的な対立軸が定着してきた。これによって政治家や政党は勿論だが、有権者の皆さん自身も自らの立場をすでに明確にしてきた。それに今回の参院選では、基地問題の是非そのものを改めて問う形にはなっていないのかなと思います」

さらに久保教授は、長く対立軸となっていた辺野古移設問題で一定の司法判断が示されたことや、日米間で大きな政策転換が検討されていないことなどから議論の”沈静化”を指摘しています。

沖縄選挙区で接戦を展開する2人の候補者の第一声を見ると―。



▼奥間亮 候補(自民・新)
「離島を伸ばすことで、沖縄がどれだけ伸びていくか。私は確信をしております。宮古島や離島の皆さんのお役に立てる候補者は私しかいない。この確信を持って戦ってまいります」

自民党公認の奥間亮さんの第一声をAIで可視化してみると、一丁目一番地の政策は離島振興だとアピールしています。



▼高良沙哉 候補(無・新)
「沖縄では辺野古新基地建設に今でも多くの予算がつぎ込まれていますが、それもしっかりと止めなければいけない。もっともっと生活者に予算が振り分けられなければいけません」

「オール沖縄」が支援する高良沙哉さんの第一声をAIで可視化してみると、基地問題に触れつつ、生活苦の解消を強調しています。

"熟慮の府"に求められる調整力



県内の基地問題をめぐっては、米軍普天間基地の移設先となる名護市の沖合で、地盤の改良工事が本格化。先月末時点で、およそ2900本の杭が造成されています。

那覇軍港の浦添移設は、ボーリング調査が実施されるなど移設に向けた手続きが進められています。

また、米軍関係者による性的暴行事件などが相次ぎ、実効性のある再発防止策が求められています。

基地問題の解決に向けて、県選出の参院議員には何が求められるのか―。「任期6年」「解散がない」などその特性を踏まえ、久保教授は、次のように指摘します。

▼関西学院大学 久保慶明 教授(政治学)
「県内全域の多様な声をくみ上げて国政に届ける。広い視野と調整力が求められると思います。短期的、政治的な駆け引きに左右されずに対話を重ね、理解を深める。”熟慮の府”としての機能を果たしてほしいと思っています」



▼奥間亮 候補(自民・新)
「現実的な対応策として、普天間飛行場の全面返還のために移設の現行計画は進めることになると思います。しかし、最後まで諦めないで、私も県民の皆さんの声に応えていくことをやりたいと思います」

奥間さんは、普天間基地の辺野古移設、那覇軍港の浦添移設に「容認」の立場を示しています。



▼高良沙哉 候補(無・新)
「辺野古新基地建設は反対です。那覇軍港は無条件の返還を求めたいと思います。基地の返還と引き換えに県内移設を掲げているからこそ、なかなか基地の負担軽減が起こらないということが問題なのではないか」

高良さんは、普天間基地の辺野古移設、那覇軍港の浦添移設に「反対」の立場を示しています。



このほか、参政党公認の和田知久さんは、普天間基地の辺野古移設は「計画の見直し」を、那覇軍港の浦添移設は「在沖米軍のあり方の見直し」を訴えています。

基地問題に係る候補者の主張を有権者は、どう捉えたら良いのでしょうか。



▼関西学院大学 久保慶明 教授(政治学)
「基地問題を過去の話としてではなく、これからの沖縄をどう作っていくのかという視点で、捉えていただきたいと思います。経済の話題から基地問題に触れて、そこから候補者の政策を多角的に評価する。そうした考え方で投票先を考えてみるのも良いのではないかと思っています」



参議院沖縄選挙区にはこのほか、政治団体NHK党の真喜志雄一さん、無所属の比嘉隆さんが立候補しています。

参院選シリーズ、次回は大きな注目を集める「物価高対策」についてお伝えします。