参院選シリーズ「1票が”変える”未来」。今回は争点のひとつとなっている防衛力強化 ・防衛費の増額について考えます。



今から3年前、国は2023年度からの5年間に必要な防衛費をおよそ43兆円とする計画を決定。今年はその計画の3年目で、計上された今年度の政府予算は過去最大の8兆7000億円あまりに上り、2022年度の防衛費5兆4000億円あまりに比べると急激な増額になっています。政府与党は、財源の不足分1兆円あまりを“増税”によって確保する方針です。

予算の大幅な増額を伴う、防衛力の“抜本的な強化”-。その是非は、今回の選挙の争点のひとつにもなっています。



防衛の最前線に置かれる国境の島、与那国。日に日に増している防衛力強化の動きに、島民の考えは今、交錯しています。

▼崎原正吉 さん
「防衛省の予算だけ増やしてなんのメリットがあるのか。段々強化するような形になるから、どうなるのかなと。我々が騒ぎ立てても、こんな小さい島ですから、沖縄県全体の行動を起こさないといけないんじゃないか」



当初想定されていた沿岸監視部隊にとどまらず、ミサイル部隊が追加配備されるなど徐々に防衛力を拡大していく国に、崎原さんは不信感を募らせています。

▼崎原正吉 さん
「歯がゆいところがたくさんあって、町民が言うのもちょっとは聞いてもらって『そうか、そういうことになるのか』ということで、説明してくれたらいいんですけど、一方的に自分がやっているのが正しいと言わんばかりに進めているのが今の国の状況ですね」

8年前に開設された陸上自衛隊与那国駐屯地には、現在およそ200人が配備されて いて、その家族を含めると島の人口の2割を占めます。自衛隊の人口比率が上がるにつれ、反対派の意見が埋もれていくのでは―。複雑な気持ちを漏らす崎原さん。



▼崎原正吉 さん
「自治体はもうなくなりますよ、やがて。電子部隊が入ると反対と言ってはいられないようになりますよ」

それに対して、容認派の嵩西茂則さんは―。

▼嵩西茂則 さん
「自衛隊が入っていろんな行事祭事、共存できているし、今でもそうだしね。今で はこの島はもう自衛隊が色んなことに加勢してもらわないと、何もできないような状況になっていますよ。要するに若い人手が足りないんですよもう」



今や、行事の担い手になっている自衛官たちと共存する島になっていると話す嵩西 さん。変化する世界情勢を前に、防衛費の増額は必要不可欠だと強調します。

▼嵩西茂則 さん
「転ばぬ先の杖であって、自国は自国で守らないといけないという観念は、これからはより一層強化していかないといけないんじゃないかと思いますよ」



漁協組合長の嵩西さんが、南西諸島の防衛力強化を容認するようになった、大きなきっかけがあります。



2010年、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件です。さらに2022年、中国軍の弾道ミサイルが与那国島や波照間島の近海に相次いで落下するなど、漁場の環境の変化を日々憂いています。



▼嵩西茂則 さん
「あれは驚異的でしたね。まさか、そこまでのミサイル演習を行うというのは、誰も予測もしなかっただろうし、海というのは、漁師の職場環境ですから、そこにミサイルが撃ち込まれたということは、職場が破壊されたのと一緒ですから。危険がますます増していくだろうというような、懸念を抱いているというのが実情です」