■「パフォーマンス動画が撮影された」

一方でロシア側は市民の殺害を否定しています。

ロシア ラブロフ外相
「ブチャで新たなニセ攻撃が行われた。交渉の結果、予定通りロシア軍は撤退した。その数日後、パフォーマンス動画が撮影された」

ブチャの大量虐殺は“フェイク”だと主張。その根拠としているパフォーマンス動画というのが、ブチャの惨状を伝えたウクライナのニュース番組です。

ウクライナESPRESO.TVのYouTubeより
「“ロシア軍がブチャで起こした戦争犯罪を弁護士団体が撮影しました。ロシア軍は街から撤退する前に数十人の民間人を虐殺しました”」

ロシア国防省はSNSでこの映像を引用し、“遺体が手を動かしている”と遺体が動いていると主張。さらに、サイドミラーに写った遺体も、“遺体が起き上がった”と。悲劇的な映像を作るために、遺体であるかのようにウクライナ側が演出していると主張しているのです。

■映像の“動く遺体”を検証

真っ向から否定したのは、映像を分析した調査報道機関べリングキャットや欧州メディアです。

▼検証1
こちらの映像。
何か白いものが下から上に動いていきます。
べリングキャットによると、動いていたのは手ではなく、
“フロントガラスの水滴だ”

▼検証2
そして体の起き上がったとされる映像。
車が遺体の横を通り過ぎ、サイドミラーに映った瞬間、動いたようにも見えます。
しかし、ベリングキャットによると「これは単なるミラーの歪みだ」と指摘したのです。

ロシアの主張は他にもあります。

ロシア ラブロフ外相
「ロシア軍は(ブチャを)3月30日に撤退した。パフォーマンス映像が出されたのはその2日後だ」

ラブロフ外相は「ブチャの映像はロシア軍が撤退した後に作られた」ものだと主張。しかし、アメリカのニューヨーク・タイムズが、ブチャの衛星画像を検証。ロシア軍の撤退前である先月19日の画像に複数の遺体が確認できるとし、ロシア側の矛盾を指摘しています。

■”ロシア国内で堂々と自分の意見を言えるのはプーチン派の人ぐらい”

こうした情報戦をロシア国内の人たちはどう受け取っているのでしょうか?

在日ロシア人 ビクトリアさん
「(ロシア国内の)親戚にその話(ウクライナの現状)をふってみたところ、完全に否定されました。全部ウクライナ側のフェイクだ、騙されるな、絶対ウソだと」

ロシア政府の主張を信じている人も多いといいます。ロシア国内では政府の主張に表だって反論する空気ではないと話します。

在日ロシア人 ビクトリアさん
「ロシア国内で堂々と自分の意見を言える人って、今はおそらくプーチン派の人ぐらいです。もちろんブチャ、ウクライナ全土でロシア軍隊が行っているのは、戦争犯罪です。私の認識では。正当化するつもりは毛頭ありません」