戦後80年 沈んだままの空母

長崎県・佐世保基地。日本が保有するイージス艦8隻の内、4隻が配備される海上自衛隊の拠点だ。

基地を見下ろす海軍墓地。遺骨と共に今も海中に沈んだままの軍艦の慰霊碑が並ぶ。現在のイージス艦の先代達もここに眠っている。

この日、太平洋戦争のミッドウェイ海戦で沈んだ旧日本海軍の空母「加賀」と「飛龍」の慰霊祭が合同で行われた。戦後80年。遺族も少なくなり単独では開けなくなった。

兄が戦死した女性(94歳)
「優しい兄でした。(Q.今戦争が多いですが、どうですか)嫌です。なんで戦争するのでしょう」

父親が戦死した女性
「母のお腹の中にいました。父です。これ(写真)が一枚だけです」
空母は今なお、海に沈んだままだ。
遺族
「(遺骨は)船と一緒に沈んだままです。箱だけきてます」
「戦争に日本がどう絡んでいくのか気になります」
「一番犠牲になるのはいつも国民」
遺族は、戦争を知らない世代が増えることに危機感を募らせる。

加賀会 井上秀敏 会長
「戦争を知らない人たちが、戦争を始める可能性があるかもしれない。平和が非常に貴重なものになりつつあります。こんなふうにして亡くなった方たちも、慰霊をしないと忘れられてしまう」
しかし、当時の安倍内閣は台湾危機などを背景に、憲法違反だとの声を押し切り、“事実上の空母”を誕生させた。皮肉にもその名は“かが”だ。

「怖さよりも使命感」緊迫の海に向かう新人指揮官

広島県江田島市の海上自衛隊幹部候補生学校。旧海軍のエリート達が学んだ戦前の“海軍兵学校”の建物が現在も使用されている。

今年の卒業生は200人。彼らには“ハンモックナンバー”と呼ばれる卒業時の成績の順位が付けられている。仮に艦長が戦死した場合、迅速に次の順位の者が指揮を執れるようにする為だ。卒業後、早いケースでは十数年で艦長や機長として第一線に立つ。
卒業生
「日本は輸入に頼っている国で、その輸入がないと国の産業もまわっていかない」
記者
「有事には第一線に行かなければいけない?」

卒業生
「命じられたら行く覚悟はできています」
「今日本が平和に、明日のご飯を心配せずに生きていける、その日常を守れたらいいと思います」
「海上自衛隊のイージス艦に憧れて(入りました)。(戦争は)怖いです。怖さよりも使命感を持っています」
緊張が高まる国際情勢に家族の心境は複雑だ。

卒業生の家族
「心配でないと言ったら嘘ですけど、2~3年したら戦争になるような、煽り過ぎのように感じています」
「国を守っていくために頑張ってやってくれているが、主人なので心配。何かあったらと考えながら日々生活しています」
「死生観というのは言いづらいところがあるので、笑顔で送り出すんですけれども、本当の気持ちはやっぱり辛いです」
指揮官として彼らが向かうのは、周辺国の思惑が複雑に絡み合う“緊迫の海”だ。
