中国の海洋進出が続くなか、東シナ海や太平洋では偶発的な衝突の危機さえ高まっています。こうしたなか、南西諸島のある無人島では、巨大基地の建設が急ピッチで進んでいます。劇的に変化する安全保障の最前線です。

日本と中国 熾烈な神経戦

P3C対潜哨戒機
「目標は170度。20ノットで南南東へ向け航行中」

中国艦隊を目標と呼び追跡するP3C対潜哨戒機。東シナ海では熾烈な神経戦が繰り返されていた。

そんな中、6月7日。中国の戦闘機がP3Cに急接近、牽制する事件が起きた。その距離、わずかに45メートル。衝突寸前だった。

防衛省 吉田圭秀 統合幕僚長(6月12日)
「ミスによって接近されたという認識はない。そういう行動を故意にとっていると受け止めています。ただし、意図については確たることを申し上げることはできない」

実は、P3Cは太平洋に初めて進出した中国の空母を偵察中だったのだ。

2003年11月、鹿児島県の大隅海峡を航行する潜水艦。中国が防衛ラインとする第一列島線を破って、日本列島に最接近した事態に政府関係者は驚愕した。

これが、南西諸島のある無人島に国内最大級の基地が建設される契機にもなった。

巨大基地へと姿を変えていく無人島「馬毛島」

鹿児島県・種子島の西わずか12キロにある西之表市の無人島「馬毛島」。

記者(2025年5月)
「コンクリート製造のプラントと思われます。大規模な工事によって、大量のコンクリートが使われることになります」

東京ドーム170個分の島に2030年、自衛隊の巨大基地が完成する。

かつての馬毛島。草木が広がり、固有種のマゲシカがいたるところで姿を見せていた。

着工から2年半。護衛艦などが接岸できる4本のふ頭、燃料タンクや管理棟、4200人もの工事関係者が暮らすプレハブが並ぶ。

マゲシカは、少なくなった緑地に追いやられていた。

馬毛島には、空母化された護衛艦の係留施設、戦争を継続するために必要な燃料タンク、約2000メートルの滑走路2本が作られる。

その滑走路で計画されているのが、現在、東京都の硫黄島で行われているアメリカ軍空母艦載機の訓練だ。

2025年5月、訓練が6年ぶりに報道陣に公開された。滑走路を空母の甲板に見立て、離着陸を繰り返す。自衛隊も最新鋭の垂直離着陸機F-35Bの訓練を行う。

国防と無縁だった島が、「南西諸島の要塞」へ姿を変えていくのだ。

その建設費をめぐって、国会では…

共産党 田村貴昭 衆議院議員
「基地建設の総額、いまだに示されていないが、一体いくらになる?」

中谷元 防衛大臣
「総事業費は現時点でお答えできないことをご理解いただきたい」

建設費はすでに1兆円を超えているとみられる。しかし、最終的な基地の規模や費用がいくらになるのかは闇の中だ。