■なぜロシア軍は“弱い”のか

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師:
「戦争が始まる前からロシア軍の集結は伝わっていた。それを衛星で見ているとテントを張っていた。数か月テントで暮らして戦争が間近になれば駅の構内で雑魚寝するなどせざるを得ない。または装甲車の中で寝るとか・・・。それで戦争に入る。だからロシア兵はもともとかなり疲れていた。勝ち戦であればそれでも士気は上がるが、負け戦であると・・・。実際損害もたくさん出ている、となると相当士気は下がって、規律も乱れるってことになる」

ロシア兵には、いわゆる職業軍人である「将校」21万1200人のほかに、給料を貰って軍に参加する「契約軍人」40万5000人と、18歳から27歳の間に12か月務めなければならない徴兵義務によって集められた「徴集兵」約20万人がいる。
今回のウクライナでの軍事作戦には15万から20万が派兵されたとされるが、その多くは徴集兵が占めるとニューヨークタイムズは伝えている。であるならソリン司令官が話していた捕虜の多くが若い新人だというのも頷ける。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
「ロシアの徴兵は、かつてはもっと長かったんですが、そうするとみんな軍隊に行きたがらないので短くした。ところが徴兵12か月ってことは、MAX1年しか軍隊経験がない兵士たちなんです。日本の自衛隊の基準からみてもプロフェッショナルの軍人になる前に任期が終わる。なので基本的には、“徴集兵は戦争には送らない”ってことに本来はなってる」

戦地へ赴く軍隊は、将校と契約軍人で構成すると決まっているが、これまでも兵力が足りなくなると徴集兵が駆り出されてきた。ジョージアとの戦争でもそうだったと小泉氏は言う。
が、それ以上にロシア軍の混乱ぶりをうかがわせる情報が小泉氏の下に入っていていた。

東京大学先端科学研究センター 小泉悠 専任講師
軍の中で命令不服従や戦線離脱は起きているらしい。不確実情報ですが、ある旅団で旅団長が部下の反乱にあって戦車で轢かれたと・・・。最初は大けがという情報だったが、のちに病院で亡くなったと続報があった」