「棺で、娘は顔以外花で埋もれていた」そして「火葬されかけらのような骨になった」

 暁生さんは意識を失い病院へ搬送されました。病院のベッドの上で意識が戻り目が覚めると、耀子さんは帰らぬ人となっていました。

 「娘とは別の病院に運ばれ、ICUで目覚めた私に医師や看護師は娘の状態をなかなか教えようとしませんでした。私は病室に来ていた妻を怒鳴りつけ、両親を怒鳴りつけ、娘が死んでしまったということを知りました。”妻からは私たちも一緒に死のう”と言われ、返す言葉はありませんでした」

 その後、暁生さん夫婦は娘を失った悲惨な現実に向き合い続けることとなりました。

 「妻はたった1人で娘の死に立ち会い。そして全く現実についていけない中、葬儀などの段取りなどを全て1人で向き合わなくてはならなかった」

 重傷をった暁生さん。ICUで意識が朦朧とする中、娘の耀子さんの事を考え続けていました。そして何とか葬儀に出ようと、医師の許可をもらい車椅子に座る練習をして、葬儀場へ向かいました。

 「私はドクターストップがかかって、通夜に出ることは出来ませんでした。葬儀にはどうしても出ると言って医師に許可をもらって車いすに座る練習をして、座るのもやっとの状態で葬儀場に入りました。そこには、自分のただ1人の娘が、顔以外すべて花に埋もれて棺に入っていました。今でもその時の光景がはっきりと頭に焼き付いていて、絶対に忘れられない光景です。娘が火葬されて、かけらのような骨になったときに、ほとんど私はもう現実感がなくて、何があったか、もうさっぱり分からないというような精神状態になっていました」