「国民が行動に移せば国は変わる」

この日、樋口さんは、いまも二審の審理が続いている浪江町津島地区の原告を前に、講演を行いました。講演では、最高裁判決の問題点に加えて、司法の「公正さ」についても意見を述べました。

最高裁の判事が、退官後に東電側の代理人を務める法律事務所に再就職した事例などを紹介したうえで、次のように話しました。

樋口英明さん「こういう疑いが持たれたのは、私は日本の裁判史上初めてではないかと思います。(裁判官は)思想傾向は偏るかもしれないけど、私利私欲のために判断することはないだろうと思われていた。だから、日本の裁判所は高い信頼性を得ていたんです。これ、明治以来の先人たちの努力の賜物なんですよ。それをこの最高裁はめちゃくちゃにしたんですよ」

一方で、最高裁の判決以降、原告側に厳しい判断が相次いでいます。いまも裁判が続く津島の住民にとっても、国の責任を否定した最高裁の判決は、「大きな壁」として、立ちはだかっています。樋口さんは、アメリカ・ハーバード大学の研究者の言葉を引用し、こう呼びかけました。

樋口英明さん「国民の3.5%が本気で結集して行動に移せば、国は変わるって言うんです。それを実証しているんです。3.5%。日本で言うと300万人。300万人が国会や裁判所を取り囲んだ図を想像してください。必ず変わります」

津島訴訟原告団・今野秀則団長「樋口先生のお話を聞いていると、物事は簡単なんです。原発に対しては。止める、冷やす、閉じ込める。そこを原点に考えれば、国民の命か、電気か、原発かという判断ができる。いとも明解に、先生は話してくれていて、よかった。改めてこの訴訟の本質が理解できたかなと思います」

津島訴訟原告団・三瓶春江さん「裁判官があれだけ、定年退職をした後まで言い続けているというのは、自分の仕事として(原発の)差し止めをしたわけでしょ。危険だから差し止めしたと言っているわけだし、いまの司法のあり方が問題だと裁判官すら言っているわけだから、そういうことをやっぱり私たちは伝えていかなければいけないし、子どもたち、次世代の子どもたちのために、やっぱり住みよい、不安じゃなくてもいいようにしてあげたいというのが、いろんな活動をする上で思っていることなので、そういうことを広げていきたいとつくづく思う」