“工房唯一のデザイナー”が描く新しい価値
3年目の職人、田中壽桃(すもも)さん(24)です。同じ大学に通っていた栗川さんの親戚の紹介がきっかけで職人となりました。

職人3年目 田中壽桃さん「これは貼りという作業です。紙をでんぷんのりで貼り合わせる」
田中さんの担当は、扇に和紙を貼る「紙貼り」で、まっすぐで平らなうちわを形作る重要な役割です。
その一方で、工房の隣にある事務所でタブレットに向かう姿も。田中さんの特技が渋うちわの魅力をさらに引き出す鍵になっています。

田中さん「デザインのオーダーがうちわに合うように水墨画風とのことだったので、自分なりにアレンジして描いています」
大学で芸術学部を卒業。今はデジタルを巧み扱い、個々のニーズに合わせたデザインを生み出しています。

田中さん「水墨画の絵を調べて、デジタルでもアナログで描いたみたいに再現できるよう頑張って描いています」
栗川さん「うちわの作る工程は守りつつ、今の時代に合ったデザインは彼女にお願いしたい。デザインを描きながら、うちわの修行もどうですかという形で」
工房唯一のデザイナーとして、2024年は季節の花をテーマに1年間で12本のシリーズを手がけました。
デザインの幅を広げることで、渋うちわの魅力も引き上げます。

田中壽桃さん「山鹿灯篭娘の絵です。贈物とかで山鹿らしいものがいいと言われた方には、この山鹿灯篭娘を見せている」
田中さんに対し、先輩職人は確かな成長を感じています。

先輩職人「シャイな子だなという印象で。自分から聞いてくることが苦手だったり、自分ひとりで抱え込んじゃったりすることがあったと思いますが、両方でよく頑張ってくれてるなと思います」
涼をとるためのうちわは、広告媒体にもなり、今や贈答品に。時代とともに役割を変えてきました。しかし、先人たちが繋いだ伝統は、次の世代へと受け継がれていきます。

田中さん「少しでも渋うちわを知らない若い世代に、私も知らなかったので、そこに知られるような絵が描けたらいいなと思います」
栗川さん「一番は次に繋ぐことですよね。このうちわの付加価値を高めていって、私がこれを作っていますと胸を張って言えるような職場にしたい」