「都市型災害」への警鐘 南海トラフ地震が起きれば…
以上が、大阪北部地震で受けた都市部での被害の概要ですが、かなりの影響があったことがわかります。しかし、この地震の規模はM6.1なのです(阪神・淡路大震災を起こした地震の約30分の1の規模)。日本中のどこにでも、いつでも起こりうる「ふつう」の地震なのです。被害が大きくなったのは、ライフラインや交通インフラなどが複雑に絡み合う「現代都市」で起きた地震だったからです。
では、もし、いま、南海トラフ地震が起きればどうなるでしょうか。政府によりますと、南海トラフ地震の起きた際の最悪のケースでは、M9クラスの規模になることが想定されています。大阪北部地震(M6.1)と比較してみると、南海トラフ地震が放つエネルギーは、大阪北部地震のなんと“約3万3000倍”にもなります。これまで書いてきた「被害」を大きく上回る事態が起きることが容易に想像することができます。
しかも、大阪北部地震は「直下型」であることから、被害は大阪を中心にした関西圏に限られましたが、南海トラフ地震の場合、静岡県から宮崎県までの広い範囲に被害がでることが予測されます。地震発生時の大きな揺れで、大阪などの都市部は、交通インフラはもとより、私たちの住む家屋が、そして、職場があるビルが倒壊するなどの被害を受け、火災も発生します。交通網は遮断され、逃げ場を失い「避難民」と化した人たちが、駅やビルの周辺、そして地下街にあふれかえり、そこに津波が襲い掛かります…。
こうした話はけっして、絵空事ではありません。「都市型災害」。今一度、未来に向けて、足元を見つめ直す時期にきてきます。
◎太田尚志 元JNNマニラ支局長。阪神・淡路大震災で自身が被災して以来、地震・火山などの災害取材を継続。MBSラジオ「ネットワーク1・17」やJNN地震特番のプロデューサーなどを歴任。