USスチール集会での“演出効果”

“合意を祝うため”とピッツバーグで開催された集会。現地で取材したワシントン支局の涌井文晶記者は、【USスチールの労働者や全米鉄鋼労働組合の組合員を多数登壇させた】“演出効果”に注目する。

涌井記者:
「労働組合の執行部は現時点で日本製鉄による買収計画に反対の姿勢を崩していない。そうした中で“組合員は多く賛成しているんだ”ということが、アメリカに中継されるトランプ大統領の演説の場で明らかにされた。これは執行部にとっては大きなプレッシャーになったのではないか」

また、集会では【あえて完全子会社化を認めるかどうかには触れなかった】と見るのは、日米の通商交渉に詳しい細川昌彦さんだ。日本製鉄の「買収額」と「投資額」がほぼ同じ点にも注目している。

【日本製鉄の“買収”費用】
▼買収額⇒141億ドル(2023年12月)
▼投資額⇒140億ドル(23日トランプ氏SNS)
あわせて“281億ドル(約4兆円)規模”

明星大学教授 細川昌彦さん:
「<141億ドルで買収>と<140億ドル投資>でバランスを取って、わざと同額にしていると思う。そして自分の都合の良いところ(投資)だけを見て発言する」

ーー買収額の141億ドルはUSスチールの株式を株主からTOBで買うお金。それとは別に設備更新などに投資する140億ドル。この投資額は当初から4倍、5倍に引き上げている

細川さん:
「投資のほうだけ“自分が交渉して取ってきた戦利品”としてアピールする。選挙キャンペーンみたいなもので、都合のいいところだけ話をして、買収のところを認めた認めてないというのは全く触れないということを、あえてしているということ」

「黄金株」の狙いは?

さらに【黄金株】の話も、<アメリカがコントロールする>と“トランプ氏が言えるようにするため”のものだという。

〔黄金株〕=拒否権付種類株式
▼持ち株1株でも重要事項に対して拒否権を行使できる特殊な株式
▼拒否権が行使できる内容は話し合いで決定

細川さん:
「“コントロールしている”という外見をいかに確保するかというところがポイントで、その手法の1つが<黄金株>。他にも、アメリカ政府と日鉄が<経済安全保障協定>のようなものを締結するというやり方もある」

ーーそうすれば100%日鉄が株を持っていても、最終的にコントロールしているのはアメリカだと言える

細川さん:
「大事なことは『この会社をアメリカがコントロールする』とトランプ氏が言えるようにするということ。今後それが具体的になると思うが、“グリップしている”という証をどうつけるかということ」