企業は価格転嫁に強気に
『6P』は、ゴロッとした食感で私も子供のころから慣れ親しんできました。永らく365円だった『6P』の価格に異変が生じたのは、2022年のことです。ロシアによるウクライナ侵攻が起き、エネルギーや穀物の輸入価格が急騰し、4月には日本の消費者物価がついに2%を超えた年です。
『6P』は、22年4月にまず385円に値上げされました。そして前述のように、この年の9月には2回目の値上げに踏み切ります。ただ、2回目の値上げは、希望小売価格の変更ではなく、内容量を減少の形で行われました。それまで108グラムだった『6P』は、102グラムと薄くなったのです。『6P』は1箱6個入り、つまり1個当たり1グラム減量したのです。減量率は5.6%で、その分、値上げされたことになります。
値上げラッシュの第1の波の頃には、こうした減量による、いわゆる『ステルス値上げ』が多くの商品で行われました。長いデフレ時代を経て、消費者の値上げへの拒否感は強く、多くの企業が、「額面価格は何度も上げられない」と感じていたからに他なりません。
しかし、今年はわずかな間に2回の値上げでも、堂々とした価格改定です。これ以上、チーズを薄くするわけにもいかなかったのかもしれませんが、企業が「消費者にも価格転嫁が受け入れられるだろう」とみていることがうかがえます。その点が、第1の波の時と大きく違うところです。