朝起きたら問題が解決していた息子「誰が持ってきてくれるの?」

ゆまさんは午前6時30ごろ、おかかさんの投稿に気が付いて、すぐに住所と電話番号を送った。午前10時半の入学式まであと4時間ほどだ。

「もうなんと言ったらいいか…神様のようです」そう送ったゆまさんに対し、「返事が遅くなって不安にさせてごめんなさい。8時ごろには着きます。あまり寝られていないと思いますので、ゆっくりしていてください」と心労を気遣う返信があった。

ゆまさんは、「本当に神様が舞い降りた」と思った。息子には、朝になって、SOSをSNSに書き込んだこと、スーツを持ってきてくれる人が現れたことを話した。

寝て起きたら問題が解決していた息子は、「ええ?誰が持ってきてくれるの?本当に?」と驚いていた。

ゆまさん母子のいる福岡県久留米市と、おかかさんの住む佐賀県鳥栖市は隣接しているが、互いの場所は30キロほど離れている。

おかかさんの自宅からゆまさんの長男のアパートまで約30キロだった

午前8時前に早めにアパートの下で出迎えようと思って靴を履いていたら、タッチの差で「着きました」と電話があって、慌てて2人で階段を下りた。

「誰が見ても優しそうなご夫婦」おかかさん夫妻の第一印象についてゆまさんはこう話す。

いっぽうのおかかさんは、ゆまさん親子の第一印象について「申し訳ないけど、お母さんはすっぴんだったし、疲れている感じ」「かわいい息子さんは、頭を何度も下げながら下りてきた」という。


「夫は人見知りだから、運転席に座ったまま」で、おかかさんだけ黒と紺のスーツ2着と、ネクタイ5本ほどを持って車を下りた。

「SNSではいろいろ書く人もいるけど、誰でも忘れることはあるからねえ」そう声をかけられたゆまさん。安心して泣きそうになったが、「ここで泣いたら気を遣わせてしまう」とこらえた。「よく午前3時にメッセージしてくださいましたね」と感謝を伝えると、「ネコに起こされたんです」と笑顔が返ってきた。

おかかさんが用意してくれた2着のスーツ。息子は黒が好きだし、もともと仕立てたのも黒のスーツだったから、てっきり黒かと思っていたら、選んだのは「紺」のスーツだった。ネクタイも紺系の落ち着いた小紋柄を選んだ。

ゆまさんはお礼を渡そうとしたが固辞された。隙を見て運転席のほうに回ったが、おかかさんの夫から意図を悟られてすぐに窓を閉められた。

おかかさん夫妻はスーツを渡すと、あっという間に帰って行った。ゆまさん親子は車が見えなくなるまで頭を下げ続けた。