沖縄戦体験を聴き取る活動をまとめた吉川さんの著書

この活動を1冊の書籍にまとめた吉川さん。その中に、元兵士の男性の苦悩が記されていました。戦時中、住民が避難するガマ(壕)を日本軍が使うことに。ガマの中で泣き叫ぶ赤ん坊を抱く母親が、子どもだけは生かしてほしいと、男性の足にすがったとき、男性はその親子を銃で撃ち、命を奪ったと証言しました。

【書籍『沖縄戦を生きぬいた人びと』より】
「銃の引き金を引いて、目の前の親子がどんどん血まみれになっていく。あの時のあの光景を、今でも何度も夢に見るんですよ。苦しくて、苦しくて……。でも、誰にも言えなかった」

戦後65年がたっていたころ「語らう場」のメンバーと共にそのガマを訪れた男性は、初めて自身の沖縄戦体験を語り、その場で泣き崩れました。

吉川さんが向き合ってきた沖縄戦の体験者は、26年で500人あまり。体験者が抱えるつらい過去を語り合う研究が評価され、今年1月、沖縄研究奨励賞を受賞しています。

▼翁長安子さん
「心理学を専攻して、それに対する使命感が。燃えているのよ。だから、(証言が出てくるまで)待つ時間も待てるわけさ」

「おばあさん、おじいさんがね、自分の思いが言えて、罪の償いではないけれども、本人が(戦争体験を)言えたということはね、吐き出した、自分の行いがまずかったっていうことを吐き出したことでね、救われているんじゃないかね」

吉川さんは来月、ホームページを新設し、書籍に掲載できなかった戦争体験を追加することにしています。書籍の英訳版も掲載する予定だということです。恩師が長年語り続けた平和への思いは、教え子へと受け継がれています。