大阪・ミナミにある「グリ下」。家や学校に居づらさを感じる若者の溜まり場になっていましたが、万博の開幕直前、行政により「塀」が設置され、光景は一変しました。

 居場所を追われた若者たちは、自らが置かれた境遇や自分たちを“排除”する大人たちに対し、「諦めの感情」や「不信感」を抱きながら、きょうも街をさまよっています。

壁一面を覆いつくす“塀” 大阪市が約1600万円をかけて設置

 開幕から1か月以上が経ち、一般来場者数が300万人を突破した大阪・関西万博。その熱気は、会場の夢洲から約10km離れたミナミの繁華街にも。戎橋の上は外国人観光客で埋めつくされています。

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 万博の開幕直前、こうした状況を見込んだ大阪市は、約1600万円を投じて“ある施策”に着手していました。

 観光名所「グリコの看板」の下の遊歩道は、かつては座れるスペースがあり、多くの若者たちが夜中まで滞在するエリアでした。市は、その “グリ下” と呼ばれるエリアに、壁一面を覆い隠す長さ16.5mの「塀」を設置したのです。その目的について大阪市は…

 (大阪市)「大阪・関西万博の期間中には、国の内外から多くの人がミナミを訪れることが見込まれる。環境改善の取り組み強化・啓発の一環として、橋の下への座り込みにより発生するゴミのポイ捨てを防止する」

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 塀に覆われる前、この場所には腰かけることのできるスペースがありました。コロナ禍の余波で観光客の姿もまばらだった2022年、取材に訪れると、「家や学校に居場所がない」と訴える若者たちが大勢集まっていました。

 (若者)「実家とかに帰ると殴られる。だから家出たし、友達の家にいるし。それでも、捜索願も出されたこともないし。家庭環境、最悪じゃない人いないよね、ここに?だいたい虐待とかあるじゃん」