「排除のメッセージになっている」行政からは事前相談なし

 こうした若者たちの存在が、放置され続けてきたわけではありません。2023年8月には、行政と警察、地元商店街、NPOなどが連携して、若者支援策を考える「グリ下会議」が発足。これまで7回にわたって会合を開き、協議を重ねてきました。

 その「グリ下会議」のメンバーで、若者支援を行うNPOの理事長・今井紀明さんは、塀の設置について行政側から事前の相談はなく、今年2月に「決定事項」として突然突きつけられたと振り返ります。

 (認定NPO法人 D×P 今井紀明理事長)「残念でならなかったですね。本当は話し合いがあってこそ、もっとできることがあったんじゃないかなと思っています。何のために『グリ下会議』をやっているのか」

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 そのうえで、塀の設置について疑問を呈しました。

 (認定NPO法人 D×P 今井紀明理事長)「(塀が)社会的な排除のメッセージになってしまっているのは懸念点としてあるなと思っています。余計、行政に頼りたくないとか、国とか大人って嫌だなとか、社会に対しての悪い印象を残す物になっていると思うんですよね」

 NPОなどの同意を得ないまま設置が決まったグリ下の塀。万博の開幕が目前に迫り、拙速に設置が推し進められたということはないのでしょうか。大阪市の横山英幸市長にたずねました。

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 (記者)「せっかく『グリ下会議』があるのに、なぜ塀の設置について会議に相談しなかったのか?」
 (横山市長)「(グリ下周辺の)管理主体が大阪市になりますので、適切な維持管理という点も重要だと思っています」

横山市長は「グリ下会議」の場で相談しなかった理由を、明確には答えませんでした。

 (横山市長)「(グリ下のように)シンボルとなるような場所を作らない。そこに行かなくていい人まで寄せつけてしまうリスクがあるんですね。分かっていながら放置することは、僕は自治体の責務とは言えないと思っています」