色が音を変える。“青い”報道空間とメロディーの関係

日曜劇場『キャスター』より
日曜劇場『キャスター』より

登場人物それぞれの世代や立ち位置に応じて、音楽の“質感”や“温度”を変えていくことも意識している。

「若いキャストのシーンは、音も若さを感じるように作りました。永野芽郁さんや道枝駿佑さんの出演パートは瞬発力のある短めの音を使うなど、全体の中での棲み分けを意識しています。一方で、高橋英樹さんはじめベテランの方が登場するシーンは、どっしりと重みのある曲にしています。若手とベテラン、それぞれの世代感に合わせて、音を分けるのはよくやる手法ですね」

日曜劇場『キャスター』より

こうした“視覚から得た情報”と“人物像に寄り添う音設計”が組み合わさることで、作品世界にふさわしい音の厚みが生まれている。また、木村氏の作曲には色彩感覚も深く関わっている。

「セットの色が赤なのか青なのかで、音の選び方が変わるんです。言葉では説明しにくいけれど、たとえば赤だと情熱的になりすぎる。今回の『キャスター』は青が基調だったので、自然とそういう音に引っ張られました」。木村氏の中では、「このコードは青っぽい」「この響きは黄色っぽい」といった感覚が長年根付いているそうだ。

このように視覚的な印象を起点に、劇伴の世界観を形づくるという手法は、日曜劇場のようなスケールの大きな作品においては特に欠かせない要素なのかもしれない。