“かっこよさ”をどう鳴らすか

日曜劇場『キャスター』より

制作当初、作品全体のトーンについては「かっこいい音楽を」という方針が共有された。だがその“かっこよさ”は、単なる派手さや親しみやすさではなく、作品が持つ社会的なテーマにふさわしい、陰影や重みを帯びたものだった。

「最近のニュース番組の音楽はポップで軽やかなものが多いですが、本作は“今の日本の無情さ”や、“報道がすべて正しいとは限らない”という感覚が土台にあるという話を聞きました。勧善懲悪では割り切れない空気感の中で、音楽もそれに寄り添う必要があると感じました」。その印象は、メインキャスターの個性が色濃く出ていた時代の報道番組の重厚さにも通じるものだった。

そうした流れの中で木村氏は、作品全体のメインテーマに加え、1話の終盤で流れる“もう1つのテーマ”も制作している。理性的な側面を支える一方で、主人公が抱える覚悟や葛藤の揺らぎに、音で応じる構成だ。また、報道という題材が持つ視点の広がりも、音作りに取り込もうとした。

日曜劇場『キャスター』より

「報道番組のオープニングで“地球が回っているCG”を目にすることがありますよね。ああいう“世界が動いているイメージ”や“俯瞰の視点”っていうのも、どこかに落とし込めないかなと。表現として明示的ではないけれど、そういう空気が音ににじめばと思って制作しました」