クラシックパーカッションとサックスをメインにした理由

日曜劇場『キャスター』より

報道を舞台にした本作では、言葉による影響力を引き立たせるような「説得力のある音楽」を意識した。力強さを表現するため導入したのがクラシックパーカッションだ。

「普段あまり使わない楽器ですが、今回は“底から音を支える”力がほしくて、クラシックパーカッションを生演奏でしっかり録りました。迫力と音圧がいつもとは異なっていて、録ってよかったなと思いました」

そして、もう1つの新たな試みがサックスの導入。日曜劇場ではこれまで使用経験がなかったが、『キャスター』のテーマにフィットしたという。「サックスって、一般的には夜のイメージとか、ちょっとファンキーで賑やかな雰囲気を持たれていると思うんですけど、クラシックの文脈でもちゃんと使われていて。今回はクラシックパーカッションと一緒に録ることもあって、“合わせたら面白いかな”と思ったんです」

しかも、サックスには意外な“ニュートラルさ”があると感じていた。「クラシックっぽく演奏した場合、個人的には中立的な印象を持っていました。報道というテーマには、そういうニュートラルな響きが合うんじゃないかと思って、今回はメインテーマにも採用し、結果的にすごく合っていたという実感があります」

使用する楽器の選択は、劇中に出てくる報道番組のスタジオセットのビジュアルにも影響を受けたという。

「スタジオの写真を見て、“これは大きいぞ”と。CGイメージでは分からなかったのですが、写真を見せて頂いたらセットがとにかく広くて。阿部さんも体が大きく存在感もすごいので、じゃあ音楽もそれに負けないものを、という感覚でした」と笑う木村氏。“負けない音”という感覚は、阿部寛という俳優への信頼とも密接に結びついている。

「阿部さんはシリアスからコミカルまでちょっとした仕草だけでも表現が豊かですので、音楽がガンガン出なくても画だけで説得力が出ると思っていたんです。だからそこも込みで、“ちょっと引き目でいこうかな”と。過去に『ドラゴン桜』など阿部さんの主演作品を何作か担当した経験もあって、目の力もそうですけど存在感がある。そこに音楽が少し乗っかるくらいがちょうどいいと思ったんです」