福岡県北九州市のトラック運転手3人が、自らが勤める運送会社を相手に裁判を起こした。

「未払いの賃金を払ってほしい」

運転手の要求に、会社がとったのは「配車差別」。

給与は減り生活が苦しくなった。自家用車を売り、お金に替えられるものは何でも替えて、しのいだ。

それでも会社に要求することをやめなかったのは、「働きやすい業界になってほしい」から。

いわゆる2024年問題で、ドライバーの働き方や待遇の改善がクローズアップされているが、果たして実際に、現場で声をあげられる運転手はどれほどいるだろうか。

裁判所に訴えが認められるまでの3年間は、立場の弱いドライバーの現状をあぶり出した。

手取りの給与 33万円が、20万~22万円に減少

松尾宏忠さん

福岡県北九州市の松尾宏忠さん(50)。

およそ20年前、当時まだ設立3年ほどだった市内の運送会社「東輪ケミカル」に入社し、トラックやトレーラーの運転手として福岡と関東などを往復してきた。運ぶのはシンナーやトルエンといった化学薬品。月に平均33万円ほどの手取り収入を得て、妻と一緒に2人の子どもを育て上げた。

トラック運転手 松尾宏忠さん「夢しかなかったですね、当初は。今から会社を大きくしていこうとやっていました」

状況が一変したのは、3年前の2022年。月額の手取り給与が20万~22万円と、最大13万円減ったのだ。思い当たるふしは、十分にあった。「配車差別」だ。