「GUILTY GEAR」シリーズの人気キャラ「ブリジット」を紐解く独占インタビュー後編では、性自認公表の舞台裏や、開発者がゲームに込めた思いを聞いていく。

■「結末は決まっていた」性自認公式発表の経緯

前編はこちら→独占取材:「男の娘」から「女性」へ 人気ゲームキャラ「ブリジット」の誕生秘話【前編】

ーーラフの段階でトランスジェンダーのマークがあったということですが、ストーリーの結末というのはいつから考えていましたか

石渡氏:
ストーリーの結末自体はブリジットがゲームに最初に登場したときから方向性自体は決まっていて、それは今と変わっていません。

ーーブリジットが生まれたときからすでに決まっていたんですね

石渡氏:
今ほど強い意味を持つのかどうかちょっとわからないんですけども、今のブリジットのドラマって、構成としては劇的なものではないんですけど、ほぼほぼ同じ内容なものが決まっていました。

片野氏:
ぱっと思いついてストーリーを変えたことはないです。ブリジットに限った話ではなく、キャラクターのメッセージであったり、ドラマについてはずっと前から決まっています。

ーー現在ではトランスジェンダーの認知もだいぶ広がり、昔から考えていたブリジットのストーリーに、時代が追いついたような形になりました

石渡氏:
そういう言い方をするとちょっとかっこいいですけれども、今だからちゃんと表現してもいいタイミングになったみたいな方が強いですかね。

片野氏:
どのキャラクターもあらかじめ石渡が考えた設定やドラマというのは決まっていて、ただ出していないものもたくさんあって。今回はブリジットを出したという、本当にそれだけの話ではあるかなと思います。

ーー再登場させるタイミングとしてはよかったかもしれない

片野氏:
そうかもしれないですね、はい。

ーー再登場後、議論が起きることは想定していましたか

片野氏:
はっきり言ってしまえば、予想通りというか当然賛否がある話題だとは思ってはいました。短い尺ではありますが、ゲーム内のストーリーでこのキャラクターがどういうふうに生きて、何を悩み、何を考えたかというのは描いたつもりです。

ただ、ピンポイントの話題だけが先行して、ゲームを買ってない遊んでいない方々が議論で盛り上がってしまい、我々が出すメッセージとは異なる方向で捉えられたりすることが増えてきて、挙句の果てになりすましまで出てきてしまった。

本来であれば「ゲームを遊んでストーリーを受け止めて解釈は人それぞれかもしれないが、我々のメッセージを受け止めてほしい」としたかったんですが公式のなりすましまで出てきて、さすがにこちら側でちゃんとアナウンスしないといけなくなったという経緯がありました。

石渡氏:
社内の会議で公式からアナウンスする必要性を議論した上でアナウンスをしたんですが、一番大きかった要因がグローバルにおいては「どちらがいいかよりも、公式がどういう旨なのか」というのをはっきりさせないことが一番の問題であるという話になった。

ユーザーは「火種を作ってるのはあなたたちの会社ですよ」というスタンスで見てくるので「どう転んでもいいから公式はどういう結論なのかということを明示してくれ」という声が非常に大きいと。

ーーゲームがグローバル展開する中、事態を収めるためにも公式からアナウンスを出したんですね

石渡氏:
収まるのかどうかはわからなかったですけれども、やはり明示したことによって、ユーザーにとってはある種の安堵を与えられたのかなというふうに、僕は読み取りました。

会議室に飾られたブリジットのグッズ

ーークリエイターとして、設定についてわざわざ表明するということは野暮に感じる部分もあると思いますが

片野氏:
我々は一応ゲーム内で描いたつもりではあるので、ゲームをプレイして確認してくれと言いたいところではあったんですが、ちょっと「ゲームを買ってそれで確認して」というには無責任なぐらいに話題が広がっていたので、改めてスタンスを発表すること自体に反対はなかったです。ただ、ネタバレになるのでそれがクリエイターとして、結末を公式サイトに載せるのはいかがなものか、というところの方が悩みとして大きかったです。