選手を通して世界に訴求、ユニフォームのビジネスチャンス
野村:
チーム側の狙い、つまり佐賀アジアドリームズがなぜこのような活動をしているのかという点も気になります。どのような戦略や狙いがあるのでしょうか?
楢崎:
まず、この活動の中心となっている方々が、もともと野球関係者である点が大きいです。監督は元ロッテの香月良仁さんが務めていますし、GMや球団代表なども、アジアの野球に対する強い思い入れ、深い愛情を持っています。野球を続けたいアジアの選手たちに場を提供したい、そして日本の野球を世界に届けたいという思いが根底にあると考えられます。
野村:
やはり、根底には野球への情熱があるのですね。
楢崎:
若者が夢を追いかける場所を提供することが、結果的に日本の野球の価値向上にも繋がるという考えもあるでしょう。そして、ビジネス的な側面で言えば、人口規模が大きく、若い世代が多い東南アジア市場への影響力は無視できません。
野村:
東南アジア市場への影響力、ですか。
楢崎:
現在はSNSが普及し、個人がメディアを持つ時代です。選手たちがSNSで母国の人々に発信すれば、佐賀での活動が彼らの国々に伝わります。実際に、スタッフが現地を訪れると「(SNSで)見ているよ」と人気者のように声をかけられることもあるそうで、その影響力の大きさを感じます。
ここにビジネスチャンスを見出すことも可能だと私は考えています。
野村:
なるほど。
楢崎:
独立リーグではスポンサー収入が非常に重要です。ユニフォームの胸など目立つ位置に企業ロゴを入れることでスポンサー料を得るわけですが、佐賀アジアドリームズの場合、その露出効果は国内に留まりません。選手の母国のテレビ局などが取材に来ることもあります。
野村:
母国のメディアも注目しているのですね。
楢崎:
昨年も母国で放送されたと聞いています。その影響力は非常に大きいため、スポンサーとしての価値は高いはずです。
東南アジアへの進出を考えている企業や、既に進出している企業にとっては、スポンサーになることで企業価値の向上にも繋がるのではないでしょうか。
野村:
つまり、佐賀アジアドリームズのユニフォームの構造は、非常に露出効果の高い広告媒体になっている可能性がある、ということですね。
楢崎:
ただ、根底にあるのは日本野球の魅力の発信や、選手たちが野球に打ち込める環境を整えることだと考えられます。長期的なビジョンとして、こうしたビジネス展開も視野に入れているとは思いますが、第一は野球を愛し、野球ができる環境を提供するという点でしょう。