発災当時の様子、「生々しく、でも冷静に」発信

約3週間の避難生活を送った家族と再会した藤本さんは、家族が語った当時の様子をまとめ、X(旧Twitter)で発信します。

この藤本さんの発信は、「当時の大変な状況を冷静にまとめてある」と大きな反響があり、その後にまとめられた「災害への備え」とともに、WEB記事として掲載されました。

家族からの聞き取りの一部より
「家中のものが落ちて飛び出して散乱した。 父が立ち上がろうとするのを押さえつけ、とにかく揺れが収まるのを待った。揺れが収まった後は、このまま家にいてはいけないと思い、両親と共に勝手口から外へ出ようとした。そのとき、外から「藤本さん家、潰れとる!」と近所の人の悲鳴が聞こえた。父が「そんなわけあるかい!」とスリッパのまま飛び出して行ったが、家の1階部分は完全に潰れて倒壊していた。」

被災時の「そのときのこと」のリアル、家族の避難所生活から見えてきた「災害への備え」は、冷静な筆致で参考になると、改めて反響がありました。

大きな注目を集めた記事は、ひとつに留まりません。
県外から能登を訪れる支援者の方向けにまとめた能登の方言集は、ボランティアの方たちにも役立つ情報として、フォロワーをはじめ多くの方から支持を受け、「てったい行く前に」(てったい=手伝い)という見出しで、別のメディアでも紹介されました。

能登の方言集 制作:parubooks編集部

藤本さんの本業は、シナリオライター、アプリゲームのシナリオや漫画の原作など幅広いジャンルの執筆を手掛けています。2011年に放送されたアニメ「花咲くいろは」。石川県を舞台に描かれた作品で、藤本さんはアニメから7年後の世界を執筆した小説版を手掛けましたがドキュメント記事を作成することは自身にとっても初めての経験でした。

能登半島地震のチャリティのために制作された「花咲くいろは」のイラスト

これらの記事に携わった経験から、発災から時間が経つにつれて少なくなってきたニュースの代わりになればと、藤本さんは一日も休まずに投稿を続けています。

藤本さんが発信する内容は、天気や炊き出しといった被災者に直結する情報、行政の情報の要約や県内外からの様々な支援の感謝、迷い犬の情報まで、住民の方から寄せられる情報を整理したものです。

迷い犬・きなこちゃん、無事に飼い主の元に戻った 提供:町野町の有志の方

投稿からは、ふるさと町野町の人たちの様子が手に取るように見えてきます。

藤本さんのXは、これまでに手掛けた作品のファンが主なフォロワーでしたが、いまでは4000人超、県内外に住む方が藤本さんの発信を見て、ふるさとの今を知ることが出来ています。